【阪急茨木市駅】阪急沿線になぜ近鉄バス? 高度成長と大阪万博が生んだ? 茨木のカラフルな路線バス事情

 

 駅を起点に、ちょっとマニアックに街を眺める「各駅停車で行こう!」

 このところ、更新をサボっていましたが、その間にも街ではいろんな不思議に出会っていました。気候も良くなってきたので、しっかり街を見つめていこうと思います。

 さて、コラム4回目は阪急京都線の茨木市駅へ。

 北摂にお住まいの方なら、既にお気づきだとは思うのですが、この駅前のバスターミナルに立つと、いろんな色のバスを目にすることができる点でユニークな駅なのです。

 最も本数が多いのは、濃いクリーム色に青い帯を敷いた阪急バス。これは北摂や阪神間ではすっかりおなじみですね。阪急やJR、北大阪急行の各駅を拠点に縦横無尽に街をつないでいます。

 そして次に多く目に入るのが、黄色の車体に稲妻のような青ラインが入る近鉄バス。さらに、赤と白のデザインが目を引く京阪バスも多数発着しているのがわかります。

 青、黄、赤とバスターミナルはほんとカラフル。次々とバスが到着しては乗客をはき出し、また飲み込んでいきます。

近鉄バス(黄色)・阪急バス(クリーム色)・京阪バス(赤色)。3社の路線バスが忙しく発着する阪急茨木市駅前

 しかし、ここで疑問が湧いてくるのが近鉄バスの存在です。

 京阪バスは淀川を挟んで、京阪電車の枚方市駅や寝屋川市駅と結んでいるので茨木に乗り入れているのもすぐに納得できます。

 でも近鉄沿線は茨木から見ると、はるか彼方(かなた)。近鉄の布施駅や八尾駅などへバスが出ているわけでもなく、これまで近鉄電車が茨木周辺を走っていたこともないはずです。

 では、なぜ、茨木に近鉄バスが走っているの?

 大阪府立中之島図書館で近鉄の社史(※)をひもといてみました。

 答えは、かつて茨木市内に拠点をおいた地元のバス会社の乗合バス事業を1965(昭和40)年7月に近鉄が吸収したからというものでした。

 当時、茨木市と摂津市の地域では「茨木バス」という地場のバス会社が営業していました。同社は1930(昭和5)年に設立。太平洋戦争を経て、1957(昭和32)年に近鉄が系列化します。このあたりの経緯は社史に詳しくなかったのですが、国鉄茨木駅、阪急茨木市駅と松沢池を結ぶ路線など同社の路線網53.6キロを1965年に「直営化」したとの記載がありました。

 茨木バスがなぜ営業譲渡したのかはわかりません。ただ、この時期は高度経済成長真っただ中。同じく社史によると、近鉄の乗合バス事業の営業エリアは1960年代の10年間で、茨木だけでなく、京都府南部、大阪市内、堺などへも一気に拡大。1960(昭和35)年から1971(昭和46)年の11年間で、営業キロ、1日あたりの輸送人員ともに2倍に増えています。まさにイケイケの時代だったんですね。

茨木での近鉄バスの由来は地元バス会社の買収にあった

 茨木バスの吸収による近鉄の北摂進出は、すぐに吉と出ました。

 茨木バスの吸収から2カ月後の1965(昭和40)年9月、大阪万博の開催が決定。近鉄は「千載一遇のチャンス」として社内にプロジェクトチームを立ち上げ、会場内でロープウェーを運営するなど万博と積極的に関わるとともに、国鉄茨木、阪急茨木市、南茨木の各駅と万博会場を結ぶシャトルバスを阪急、京阪と共同運行しました。

 このバスはピーク時はなんと19秒間隔で運行。1日で10万人を運んだというから、万博人気のすさまじさが伺えます。もちろんそれだけ儲かったはず。これだけの高頻度運行を可能にしたのは、茨木や摂津に車両の拠点を構えていたからとも言え、茨木バスの吸収時に既に大阪万博を視野に入れていたというのは考え過ぎでしょうか。

 近鉄バスにとって、茨木エリアはいまも重要性は変わりません。

 茨木市が2014(平成26)年にまとめた「茨木市交通戦略~住みやすい・移動しやすいまちを目指して~」によると、現在、阪急バスが中心地域と北部地域、近鉄バスが中心地域と南部地域、京阪バスが中心地域と南部地域を主に運行。2011(平成23)年の年間乗車人数(市内のバス停の乗車人数を合計)は、阪急バスが437万8000人、近鉄バスが312万6000人、京阪バスが149万4000人で、近鉄バスはナンバー2につけ、相当のシェアを握っていることがわかります。

阪急バス
京阪バス

 

 3社が地域を分け合うことは各社間に競争を生む一方で、課題があることも「交通戦略」は指摘しています。それは、それぞれの運行エリアが異なるため、路線バスで市内を移動する際には、乗り換えごとに初乗り分の運賃が必要となり、利用者の料金負担が大きくなっている点です。

 例えば、市を南部から北部へ移動する際は、阪急茨木市駅またはJR茨木駅などで近鉄バスから阪急バスへの乗り換えが必要となります。同一社間でも乗り換えが求められるケースはもともと少なくないですが、芦屋市や西宮市ではターミナル駅をまたいで市内の南北を往来する路線も多く、この指摘はまったくの的外れでもないようです。

 そこで茨木市では、路線バス利用者の利便性と高めるとともに、バス利用の促進を目的に、自社間や他社間で路線バスを乗り継ぐ際の運賃の値下げについて各事業者と検討すると「交通戦略」には記載されています。ただ、乗り継ぎ運賃の導入によって利用者が増えない限り、バス会社の減収につながるため、本格導入は社会実験などを経て短期~中期的に可否を判断したいとしており、その後、取り組みはあまり進展していないように見えます。

茨木市内で地域を分け合う3社。連携が課題になっている

 大阪万博時に整備された阪急茨木市、JR茨木の両駅前のバスターミナルでは、いまバリアフリーを含めた再開発が議論されています。

 また、茨木のJR京都線には新駅「JR総持寺駅」が来年春開業。国道171号や名神高速道路のインターに近く、市は新たな交通結節点として整備していく方針です。路線バスの開通も見込まれているので、どこの会社が乗り入れるかも見どころですね。

 阪急、近鉄、京阪。阪急茨木市駅に発着する色とりどりの路線バスを通して、高度成長期から未来へ。茨木、北摂エリアが歩んできた街の歴史も垣間見えたような気がしました。(鈴)

※「近畿日本鉄道最近20年のあゆみ 創業70周年記念」「近畿日本鉄道100年のあゆみ」(近畿日本鉄道)を参照しました。

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 「各駅停車で行こう!」は、駅から始まる人や街の話題を少しマニアックにつづります。




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