私たちの体をよく知るために(2)~月経周期に伴って起こるPMSとPMDD

【大塚製薬プレスセミナー「女性の健康セミナー in 大阪」採録2】

 

 近畿大学東洋医学研究所所長・教授で東北大学医学部産婦人科客員教授の武田卓(たかし)さんの講演「女性ホルモンと女性の健康・診療の実際」の続きを紹介しよう。今回は女性ホルモンの短期的な変化=月経周期に伴って起こる不快な症状についてのお話だ=写真

 

■古くから知られていた女性特有の症状が現在は……

 更年期障害が広く知られ、研究も進んでいるのに対して、月経の1~2週前から始まり、月経開始後数日で症状がなくなる月経前症候群(PMS)と月経前気分不快障害(PMDD)については、一般の女性だけでなく医療サイドでの認知度も低い現状だ(一般男性は論外)。しかし歴史的にみると、西洋医学の祖と言われるヒポクラテスの書や東洋医学の漢方の古典「傷寒論」にも記述があるほど古くから知られていた症状だ。

 最初に結論を言うと、女性に特有のこの不快症状が何であるのかを理解するだけでも症状が楽になるので、本人が理解するだけでなく、周囲から理解を得ることも重要だと考える。社会全体で広く認知されることと同時に、私は特に、思春期の男女に対するホルモン関連疾患の啓発と教育を強く訴えたい。

■月経前症候群(PMS)と月経前気分不快障害(PMDD)とは何か?

 月経前症候群(PMS)は、手足のむくみ、腹部膨満感、乳房痛、頭痛などの「身体症状」と、抑うつ、怒りの爆発、いらだち、不安、混乱、社会からの引きこもりなどの「情緒的症状」がある。米国産婦人科学会は、過去3カ月間以上連続して、月経前5日間に上記の症状の少なくとも1つ以上があることなどを診断基準に挙げている。実際に確認されている症状は他にも、ねむけやだるさ、過食・拒食なども含め約150種類以上と多岐にわたる。

 月経前気分不快障害(PMDD)は、どちらかというと精神科領域からの診断で、文献的には重症型のPMSと重なる。コアな症状としては、うつ気分、不安・緊張・興奮、涙もろさ、怒りやイライラなどがある。

■原因はまだ不明、セロトニン関与説が有力

 原因は諸説あり、はっきりとはまだ解明されていない。排卵を抑制すると発症しないことから、黄体ホルモンが誘因となり、セロトニンが関与しているという説が有力だ。

 医療現場での治療は大きく分けて、カウンセリングと薬物療法の2つがあるが、日本の成人女性のうち180万人が未治療のまま放置されているといわれている。

 カウンセリングでは、本人に重症度の位置付けを認識させる症状日記をつける認知療法、規則正しい睡眠、定期的な運動、バランスのとれた食事、刺激物を避けるなどの生活を指導する。薬物療法は、軽症の場合は対症療法で、精神安定剤、利尿剤、鎮痛剤や漢方を用いる。重症の場合は、セロトニンを増やす作用のある抗うつ剤や排卵抑制作用のある低用量ピルを用いる。

■症状が重いのは成人女性よりも思春期の高校生

 仙台の女子高校生と大阪の成人女性を対象に行った私の研究調査では、高校生のPMSの重症度とPMDDは、成人よりも有意に高いという結果が出た。高校生の11.9%がPMSによって月に1日以上学校を休んでいる。ここで大きな問題は、この疾患に関する正しい情報を親世代も知らないということだ。学校での啓発教育が大切な理由がここにある。ちなみに東日本大震災の前後で、啓発教育を実施した高校と実施していない高校で、PMSの重症度とPMDDの発症率を比較したデータを取ったところ、啓発教育を行った高校では変化がなく、教育を行っていない学校では発症率が高くなった。

 大阪の成人女性を対象に行った私の研究調査では、11.5%が月に1日以上休業していた。また、アメリカでは勤労女性を対象にした調査があり、経済的な損失は女性1人あたり年間で4,000ドル(約50万円)にのぼると報告されている。これから日本がめざす女性活躍社会を考えると、看過できない数字ではないだろうか。

 更年期のヘルスケアと同様に、PMSとPMDDの自己管理でも心身機能を調和させることが大切だ。規則正しい生活、バランスのとれた食事、適度の運動を基本となる。

 栄養面で治療効果の有効性が報告されているのは、カルシウム、セロトニンを作るのに必要なビタミンB6とマグネシウムだ。反対に良くなさそうなものは、肉類に多く含まれる飽和脂肪酸だ。献立を考える時、肉類ばかり摂取するのではなく、不飽和脂肪酸を含む青魚などに切り替えることも大切だ。

(取材者から)月経前におなかが張ったり、乳房が痛くなったりするのがPMSだったのね。そういえば、そんな時はちょっとしたことでもイライラしがちだったかも。月経前に「いつもの自分ではない」と感じたら、「あ、これはホルモンのせいなのね」と、本人が自分の状態を客観的に理解できていれば、平常心を保って安心していられるってことなのかもしれません。




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カテゴリ: AFメディカル

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