ダイナミックにたくましく響いた20世紀アメリカの名曲~兵庫芸術文化センター管弦楽団第101回定期演奏会~

【PACファンレポート⑱第101回定期演奏会】

 

 今シーズンのPAC(兵庫芸術文化センター管弦楽団)は、一段とたくましいオーケストラになったのではないか――。そんな感想を抱いた11月18日土曜の第101回定期演奏会だった。

 

 この日のマエストロは1959年ニューヨーク生まれのキース・ロックハート。35歳でボストン・ポップス・オーケストラの第20代指揮者に就任し、現在はBBCコンサート・オーケストラの首席指揮者。PACとは過去2回、ジルヴェスター・ポップス・コンサートで共演している。印象的だったのは大柄な体を駆使したダイナミックな指揮姿。

寺門孝之さん(画家・神戸芸術工科大学教授)が描く2017年11月のプログラムの表紙は「ひびきくん、みみをすます(その3)」。聞こえてきた音に導かれてキッチンの片隅で出会ったものは……

 演奏曲は20世紀アメリカを代表する2人の作曲家の作品だ。

 冒頭はジョージ・ガーシュウィン(1898-1937)の「パリのアメリカ人」(1928年ニューヨークで初演)。当時は新興国だったアメリカからヨーロッパの中心・花の都パリにやって来た人(おそらくは男性)のまるでスキップしているような高揚感に、聴いている私もワクワクしてくる。演奏するPACメンバーもウキウキして、とても楽しそうだ。

 

 ソリストで登場したピアニスト反田恭平は、1994年東京生まれ、まだ23歳の俊英だ。2012年高校在学中に第81回日本音楽コンクール第1位入賞(併せて聴衆賞も受賞)。14年チャイコフスキー記念国立モスクワ音楽院に首席で入学し、15年にCDデビュー。16年サントリーホールでのデビュー・リサイタルは2,000席が完売して圧倒的な演奏を聴かせたという。

 細身の体にスタイリッシュな黒のコスチュームで登場し、ガーシュウィンの「ラプソディー・イン・ブルー」を情熱的に披露した反田。プログラムを見ると、中学の半ばまでサッカー少年で、本格的にピアノに取り組み始めたのは14歳というから驚く。この「少しアウトロー的な感覚が、(ニューヨークでは札付きのワルだったといわれる)ガーシュウィンと共有できるかもしれない」「PACでの3回の公演は、毎回違ったテイストを出したい」と抱負を述べていた。定期演奏会中日のこの日は、どんなイメージで弾いていたのだろう。PACの音に耳を澄ましていたかと思うと、決然と天を仰ぎ、鋭角的な指使いで圧倒的なフレーズを紡ぎ出す姿に目が釘付けになった。

 反田のアンコール曲は、彼自身が作曲した「子どものための練習曲より」。両指すべてを柔らかく使った潮騒のようなピアノの響きが心地よかった。

 

 オーケストラの演奏は、アーロン・コープランド(1900-1990)の交響曲第3番。PACの定期演奏会でコープランドの曲を演奏したのは、2014年10月の第73回に「エル・サロン・メヒコ」以来2度目。初めて聴く珍しい交響曲だったが、楽章ごとの輪郭がはっきりと表れている魅力的な曲だった。第1楽章の流麗な旋律の余韻の中で、リズミカルな第2楽章が始まり、美しく抒情的な第3楽章の後に続く第4楽章は音の洪水。多彩なパーカッションと躍動する金管が随所に顔を出す総勢90人の大編成のオーケストラの魅力を堪能した。

 印象的だったのは、本公演のトップを務めたクラリネットのルシア・グラナドスとホルンのアストリッド・アルブーシュの見事な演奏。トランペットの池田悠人も、トロンボーンの橘田達郎も光っていた。

 

 コンサートマスターは四方恭子。ゲスト・トップ・プレイヤーは、ヴィオラの馬渕昌子(紀尾井ホール室内管弦楽団、93年ミュンヘン国際コンクール第3位)、チェロのクレメンス・ヴァイゲル(アンサンブル・ベルリンメンバー)、コントラバスの加藤正幸(元東京フィルハーモニー交響楽団副首席)、ティンパニの中山直音(関西フィルハーモニー管弦楽団首席)。スペシャル・プレイヤーは、PACのミュージック・アドヴァイザーも務めるヴァイオリンの水島愛子(元バイエルン放送交響楽団奏者)と、ホルンの五十畑勉(東京都交響楽団奏者)、パーカッションの坂上弘志(元大阪フィルハーモニー交響楽団奏者)。PACのOB・OGもヴァイオリン6人、ヴィオラ3人、チェロとコントラバス各1人が参加した。(大田季子)




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