佐渡裕芸術監督が“金色の音”に挑み2016-17シーズン開幕
兵庫芸術文化センター管弦楽団

【PACファンレポート④ 第90回定期演奏会】

第90回定期演奏会の様子 兵庫県立芸術文化センター提供(撮影:飯島隆)
第90回定期演奏会の様子
兵庫県立芸術文化センター提供(撮影:飯島隆)

 開館から11シーズン目となる兵庫芸術文化センター管弦楽団(PAC)定期演奏会が始まった。

 開幕の演奏はブルックナーの「交響曲第9番」。2013年3月の第59回定期演奏会で下野竜也が指揮して以来、2度目となる大曲に佐渡裕芸術監督が挑んだ。総勢89人の大編成のオーケストラは風格漂う重厚な音色を聴かせた。

 PACは在籍期間を最長3年とするアカデミーの要素を備えた若手演奏家の楽団だ。9月17日、恒例のプレトークを行った佐渡裕芸術監督は、新メンバー19人の加入を報告。

 「毎年春から世界中でオーディションをしていますが、今年は世界11カ国から演奏家が集う楽団になりました。8月に丹波篠山で音楽合宿をして、この演奏会に臨んでいます。定期演奏会では毎回、世界のトッププレーヤーが若手の指導を手伝ってくれていますが、今回オーボエはベルリン・フィルからクリストフ・ハルトマンが参加してくれています。近年、ヨーロッパで活動をしていて感じるのは『日本の楽団には“金色の音”が足りない』ということです。だから今日の演奏会では“金色の音”を出したいと思います」

  佐渡芸術監督の言う“金色の音”はどんなイメージなのか? 客席は高揚した気持ちで演奏を待った。

演奏会で配布されたプログラム。今シーズンは寺門孝之さんが「音楽を聴きながら」即興で描いた絵が表紙を飾る

 ブルックナー独特の「原始霧」の異名を取る弦楽器のトレモロから始まる第1楽章。

 大ホールに神秘的な気配が満ちる。徐々に豊かさを膨らませるホルンの響きに誘われるように、全オーケストラが一斉に共鳴して第1主題を奏でる。その圧倒的な迫力に、眠っていた脳の一部が覚醒するような衝撃を感じた。

 一呼吸おいて始まった第2楽章。

 オーボエとクラリネットが奏でる不協和音に続いて、巨大な音の塊が「これでもか」とばかりに荒々しく迫り、うねり、舞う。演奏家たちは持てる限りの力を注いで、懸命に音のつぶてを空間に放ち続けているようだった。

 そして第3楽章のアダージォ。

 静かな弦の調べで始まった調和が一気に高みに突き抜け、ティンパニ(ウィーン交響楽団首席ミヒャエル・ヴラダー)の合図とともに全楽器が大爆発する。再び静寂が戻り、メロディーが揺らぎながら躍り出す・・・。幾度かの上昇と下降を繰り返し、起伏の果てにたどり着いた先は、白い光に満ちた、魂が浄化される場所。

  約70分に及ぶ濃密な演奏を聴き終えて、惜しみない拍手が大ホールを包んだ。

 今シーズンのPACは、かつてない大人びた音を響かせて船出した。(大田季子)

第90回定期演奏会の様子
第90回定期演奏会の様子
兵庫県立芸術文化センター提供(撮影:飯島隆)



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