サプライズ満載 新時代到来を告げた佐渡裕芸術監督  兵庫芸術文化センター管弦楽団第94回定期演奏会

【PACファンレポート⑧ 第94回定期演奏会】

 阪神・淡路大震災からの復興のシンボルとして誕生した劇場とその管弦楽団として、PACと佐渡裕芸術監督は毎年1月には厳かな祈りに満ちた演奏会を続けてきた。

 今年もきっとアンコールにはG線上のアリアが演奏されるのだろうな……そう予想して出かけた1月14日の定期演奏会は、新時代到来を告げる驚きに満ちた演奏会だった。

寺門孝之さん(画家・神戸芸術工科大学教授)が「田園」を聴きながら描いた2017年1月号のプログラムの表紙

 

 開演に先立って恒例のトークに立った佐渡芸術監督は、昨年4月に起こった熊本地震への義援金募金協力への感謝を述べ、集まった義援金を熊本県立劇場に寄贈したと報告。「皆さんに直接お礼を申し上げたいと、本日は姜尚中館長がお越しになっています」とのサプライズに客席はざわめいた。

 姜館長はお礼の言葉とともに「佐渡さんからは、うちの観客は日本一と伺っています。熊本県立劇場も、こころの復興をめざして少しずつでも頑張っていきたい」と話した。

 演奏はドビュッシー「小組曲」(H.ビュッセル編曲)から。冒頭のフルートの美しい調べから明るい気が劇場に満ちる。

 「小舟にて」「行列」「メヌエット」「バレエ」の4曲を、各楽器が色彩豊かに奏でていく。どこか東洋趣味を感じさせるメロディーがドビュッシーの持ち味。原曲がピアノ曲とは思えない完成度の高い小品だった。

 

 ソリストは日本を代表するチェロ奏者の藤原真理がハイドン「チェロ協奏曲 第2番」で登場。佐渡芸術監督と彼女の共演は初めてという。小柄な体から繰り出される演奏は驚くほどパワフル。楽器と同じくらいの背丈に見える彼女のどこにこれほどの情熱が潜んでいるのだろう。

 アンコールはJ.S.バッハ「チェロ組曲第1番」より「サラバンド」。演奏中の表情に「この人は心底チェロという楽器を愛しているんだな」と思えた。

 交響曲はベートーヴェン第6番「田園」。佐渡芸術監督はこの曲の初指揮を、今シーズンのPACのオープニングで篠山市立たんば田園交響ホール(その名も田園!)で行った。

 冒頭のトークで佐渡さんは「『田園』は平和で美しい曲と思われているが、ベートーヴェンは、第5番『運命』とほぼ同時期にこの曲を書いている。その頃はもう彼の聴覚は相当失われていたはず。どんな気持ちでいたのだろうと考えた」と話した。

 主題は耳になじんだメロディー。いろいろな楽器が入れ代わり立ち代わり同じ主題を繰り返す。「相手の言葉をそのまま返す」のが人間同士のコミュニケーションの基本(ほら、赤ちゃんが言葉を覚え始める時のあの感じ)。とすればこの音楽は、楽器同士が互いに対話し合って紡ぎ出しているように響く。そこにあるのは、温かな信頼……。

 演奏を聴いているうちに私は思った。ベートーヴェンは聴覚が失われつつある中で、人と人、人と自然の相聞歌のような温かな対話のやりとりを懐かしみ、譜面にとどめようとしたのではないだろうか、と。

 ゲスト・コンサートマスターはバイエルン放送響のアントン・バラコフスキー。同楽団からはコントラバスのハインリッヒ・ブラウンがゲスト・トップ・プレイヤーで登場。おなじみの林裕(チェロ)、韓国テグ響首席の竹村淳司(ホルン)もゲスト・トップ・プレイヤーに名を連ねた。

 スペシャル・プレイヤーはベルリン・フィルのクリストフ・ハルトマン(オーボエ)、東京フィルの五十畑勉(ホルン)、元大フィル首席の坂上弘史(パーカッション)が務めた。

 交響曲の演奏中から舞台上に大太鼓があることが気になっていた。なんと、PACのアンコール曲はシュトラウス2世「雷鳴と稲妻」! ド迫力のサプライズでにぎやかに新年を飾った。(大田季子)

 

【芸術文化センター 大規模修繕お披露目のお知らせ】

 兵庫芸術文化センターは2005年10月の開館以来の大規模修繕に入り、PAC定期演奏会も2・3月はない。

 大規模修繕お披露目として、4月8日(土)9日(日)「佐渡裕 音楽の贈り物~指揮者ってなあに?~」が開かれる。各日11時からは「指揮者の歴史」、14時からは「2拍子君と3拍子ちゃん」。休憩なしの60分公演で有名な曲を演奏しながら指揮者の秘密に迫る。A席2,000円、B席1,000円。チケット一般発売は1月22日(日)。詳しくはセンターのホームページで。 

11時公演 「指揮者の歴史」

14時公演 「2拍子君と3拍子ちゃん」

 




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