【まなびタイムトリップ】Vol.10 松蔭中学校・高等学校 校長 服部洋介先生

本嫌いから作家志望へ 人生を変えた宿題

 小学生の頃は本が嫌いで、漫画雑誌ばかり読んでいました。父が大学教員だったので家には単行本や全集がたくさんあり、母がそれを読み聞かせようとしていましたが、私は全く受け入れられませんでした。

 ところが中学3年の夏休み、「1人の作家の本を5冊読む」という宿題が出たんです。仕方なく選んだのが太宰治。教科書には一部しか載っていなかった物語を最後まで読み通すと、印象が全く違いました。学校の授業がスプーンのひと口だとすると、スープ皿や鍋くらいの広がりがあるように感じたのです。他の4冊も無理やり読んでみると、それぞれ違うおもしろさがあることに気づいて。この時から、いろんな本を乱読し始め、大学生の頃には作家を目指すようになりました。

 小説を読むだけでなく書くようになったのは、幼い頃の体験も影響しています。実は私の右目、生まれた時から視力がほとんどなく、小学校低学年の頃、学校に行かず病院内の弱視学級で訓練を受けた時期があります。その時「どうして自分はこうなのか?」「人間とは何か?」と自分を見つめる時間を持ったんですね。そんな風に内省してきたことが、文学に目覚め、やっと言葉にできるようになったのだと思います。

 今の私には、太宰治より夏目漱石の作品を読み返す方が、きっとおもしろいはずです。人には年齢によって出会うべき本があり、その時にしか読めない本があるのでしょう。子どもたちには、本に限らず、その時の自分にマッチした人や物や学問と出会えることを願っています。

 

   

松蔭中学校・高等学校 校長 服部洋介(はっとり・ようすけ) 先生

1954年兵庫県生まれ。六甲中学校・高等学校、上智大学英文学科を卒業後、英語教師として松蔭中学校・高等学校に赴任。大学時代から小説を書き始め、30代半ばで新人賞を受賞。2011年から現職。

 

 

 

 

【学校データ】

創立1892年 生徒数:中学426人、高校559人(2014年4月現在) 教育方針:「オープンハート」。14年、普通教室のすべてに電子黒板を導入

※2015年2月掲載




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カテゴリ: まなびタイムトリップ

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