兵庫芸術文化センター管弦楽団 2015-16シーズン有終の美を飾る

【PAC ファン レポート②】  ~第89回定期演奏会~

躍動感あふれるタクトさばきで魅了したダニエーレ・ルスティオーニ

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会場で配られた
今月のプログラム

 6月18日の兵庫芸術文化センター管弦楽団(PAC)定期演奏会は、今年33歳になるミラノ生まれの陽気な指揮者が、変化に富んだプログラムを見事に聴かせて2015-16シーズンの最後を飾った。

 コンサートマスターは四方恭子さん。かつて「朝日ファミリー」でエンタメ特集をした時に取材させていただき、「ホールでは、演奏家の一生懸命な姿を見てほしい」とおっしゃっていたことを思い出す。

 オープニングは、初登場の指揮者ダニエーレ・ルスティオーニと同じイタリアの偉大な作曲家ロッシーニの歌劇「泥棒かささぎ」序曲。鳥のさえずりのようなモチーフが随所に聞かれ、楽しい気分を盛り上げる。

 目の覚めるような青のロングドレスで登場したソリストの川久保賜紀は、しなやかにコルンゴルト「ヴァイオリン協奏曲」を披露。オーストリアのブリュン(現チェコのブルノ)に生まれ、アメリカに亡命して映画音楽の大家となったコルンゴルトの曲は現代的で、スクリーンに展開する壮大なストーリーを思い起こさせた。川久保のアンコール曲はパガニーニの「カンタービレ」。指揮者のルスティオーニは、舞台奥のパーカッションの予備席に座り、川久保の妙技に聴きほれ、客席の微笑を誘った。

 ドヴォルザーク「交響曲第8番」は、楽章ごとに趣を変えながら、とてもドラマチックな美しさを持つ、メロディアスで抒情的な作品だった。チェコの民族音楽的な情熱が感じられるパートでは、ズラリと並んだヴァイオリンの鋭角的な動きやチェロのピチカートなどが印象的だった。

 指揮者にとってフィニッシュのポーズは特別なものだろう。指揮台がダンスフロアに思えるほど躍動的に動いたルスティオーニは、交響曲とアンコール曲のヴェルディ歌劇「運命の力」序曲のフィニッシュで飛び上がって回転し、客席を向いて熱狂させた。

 最長3年の在籍期間を設けるアカデミーの要素を併せ持つ楽団の“宿命”として、今回の演奏会と7月の佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ2016「夏の夜の夢」を最後に、楽団を巣立つ十数人の若き演奏家たちにとって、センターの10周年記念演奏会などもあった今シーズンは、生涯決して忘れられない特別な時間だったのではないだろうか。

次のシーズンの開幕は9月。第90回定期演奏会は、佐渡裕芸術監督のブルックナー「交響曲第9番」だ。新しいメンバーを加えた楽団は、どんな響きを聴かせてくれるだろうか。(大田季子)




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