熱狂続いた大阪松竹座新築開場二十周年記念「五月大歌舞伎」

 新築開場20周年を迎えた大阪松竹座の舞台で連日、「五月花形歌舞伎」の熱演が続いている。大阪松竹座での共演は8年ぶりとなる市川猿之助と中村勘九郎、七之助の兄弟の3人を中心とした勢いのある舞台は必見。前評判も高く、昼の部はほぼ満席。夜の部もチケットは残り少なくなっているが、この公演は5月12日(金)昼の部以外は、3階右後方の12席を幕見席として用意しているので、時間をやりくりして出かけてみては?

 幕見席は当日朝10時から劇場窓口のみで販売(支払いは現金のみ)。詳しくはコチラ http://www.kabuki-bito.jp/news/3964

 

【歌舞伎ファンREPORT①】

 連休明けの8日、ようやく手にしたチケットを手に11時開演の昼の部へ。開場前からたくさんの人だかりができていて、当代きっての花形役者たちがそろう舞台への期待の大きさを物語る。

  幕開けは舞踊の名作『戻駕色相肩(もどりかごいろにあいかた)』

 春爛漫の紫野を舞台に、島原の禿(かむろ)たより(児太郎)を乗せてきた二人の駕籠(かご)かき、浪速の次郎作(勘九郎)と吾妻の与四郎(歌昇)が、軽妙洒脱な舞踊を見せていく。次郎作は精悍な顔立ち、与四郎は色白の優男、その対比も面白い。

 二人に呼ばれて、駕籠の中から「あーい」と姿を見せた禿の愛らしい着物姿に、劇場がほおーっとどよめく。踊りの中で、大坂の新町、京の島原、江戸の新吉原と、江戸時代に大いににぎわった廓(くるわ)の雰囲気が表現されているのが粋だ。

 日本舞踊や文楽でもおなじみの「禿々と沢山そうに 言うておくれな訳見習うて……」を、児太郎が可愛らしく踊った。

 駕籠かきのはずの二人が、興に乗って踊るうちに取り落とした品から、それぞれの正体が判明し……という、いかにも歌舞伎らしい趣向も大いに楽しめた。

 

 続く『金幣猿島郡(きんのざいさるしまだいり)』は、江戸時代の大人気作家、四世鶴屋南北の遺作だ。1829(文政12)年の江戸中村座の顔見世興行での初演後、長く上演が途絶えていたものを1964(昭和39)年に、東京の日生劇場で、武智鉄二の補綴(ほてつ)・演出により三代目市川猿之助(現・猿翁)が復活上演。5年後の69(昭和44)年の自主公演で完全復活上演を成し遂げ、何度も磨きをかけて「三代猿之助四十八撰」の一つにも数えられるスペクタクルな作品だ。大阪では23年ぶりの上演という。

 

 物語は「道成寺」の安珍・清姫の伝説を下敷きに、平将門の妹・七綾姫とその許嫁(いいなずけ)文殊丸頼光(仮の姿は北白川の安珍)の純愛を重ね合わせる。そう聞くと荒唐無稽な話と思うだろうが、そこを無理なく見せてくれるのが、歌舞伎の歌舞伎たるゆえん。

 

 序幕「宇治通円の場」。安珍を恋い慕うあまり泣き暮らして盲目となった娘・清姫(猿之助)は、一度は七綾姫(七之助)の身代わりとなって死ぬことを承諾したが、頼光(勘九郎)が探し求める村雨の宝剣の力で視力を取り戻し、七綾姫が恋敵であると知り、嫉妬に狂う形相が凄まじい。

 七之助の可憐な美しさ。勘九郎のりりしさ。まるで絵から抜け出したような二人の姿を見ていると、何かのインタビューで、「兄を助けよ、といつも父に言われていた」と語っていた七之助の覚悟の見事さを思う。

 門之助、笑三郎らの達者な殺陣、三井寺鐘楼堂建立のための釣鐘(清姫には欠かせません!)を舞台に登場させる猿弥の怪僧ぶり、丁々発止のやり取りが続く舞台から目が離せない。序幕の最後で清姫は蛇体となり、鐘に絡みついて息絶える。

 

 二幕目第一場「橋姫社の場」では、猿之助が、七綾姫に横恋慕した挙句、官位をはく奪された藤原忠文役で登場。社に隠れていた七綾姫を見つけて思いを遂げようとするが、七綾姫は頼光とともに逃げ出し、第二場「木津川堤の場」へ。

 追っ手の忠文を振り切って、小舟で向こう岸へと向かう頼光と七綾姫。怒り狂った忠文は生きながら鬼となり、木津川に身を沈めた途端、川面が炎に包まれ、後にしてきた橋姫社が焼け落ちてしまう……。大掛かりな舞台装置で見事に見せるその様を呆然と見ているうちに、悪鬼となった忠文と清姫の怨霊が合体し、憎き二人の後を追いかけて飛び去っていく……。

 昨年の大阪松竹座スーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』でも同じことを感じたが、宙乗りを勤める猿之助の身体能力の高さには、ただただ目を見張る。そして、その時の猿之助の楽しそうな顔ときたら! 5月16日(火)昼の部で、猿之助は宙乗り1000回を迎える。その瞬間に立ち会えないことが口惜しい。

 大喜利所作事は「双面道成寺(ふたおもてどうじょうじ)」。大団円を迎えようとする近江国・三井寺に、白拍子・花子(猿之助)がやって来て、舞を奉納したいという。白拍子は実は狂言師・升六、男子禁制の場に入り込んだのは七綾姫を詮議するためかと問われ、疑惑を晴らそうと、狂言舞を踊るうちに怪しさが増していき……。

 2回の休憩をはさんで約4時間。たっぷり楽しんで大阪松竹座を後にする観客たちの興奮したおしゃべりと満足そうな顔。歌舞伎は幸せを運ぶ妙薬かもしれない。

 大阪松竹座の「五月花形歌舞伎」は5月26日(金)まで。夜の部(16時開演)は、落語ファンにはおなじみの『野崎村』と勘九郎の三役早替わりが話題の『怪談乳房榎』。未体験の人は、この機会にぜひ! 

(大田季子)




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