【藤本さんちの“こくはく・こくはつ”】Vol.8 虫歯とフッ素と(奥さん 統紀子さんの巻)

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 先日、あるテレビ番組で、水道水にフッ素を混入することがいいか悪いかをめぐってカンカンガクガクのやりとりがありました。

 片や、フッ素混入を研究している大学の研究員、歯科医たち。片や、フッ素のブクブクうがいを学校で生徒に強制したと怒る主婦、宝塚のフッ素による斑状歯を問題にする歯科医など、口角泡をとばしての激論となりました。

 番組が終わって、お茶をのみながらも話はエスカレートし、周囲の人たちから、

 「少し静かにしていただけませんか」

 と、クレームがつくほどに白熱した議論が続いたのです。

 わたしが関心をもったのは、やはり宝塚の斑状歯の問題でした。地元のことでもあるし、六甲山系の水のフッ素含有量が多いために斑状歯ができるのだと聞かされれば、単に学問上のデータだけで水道水にフッ素を混入してもらっては困る、と思ったものです。

 どうして水道水にフッ素を入れようという案が出されたかといえば、年々こどもたちの間に虫歯が増えてきて、いまや一歳の乳児にさえも虫歯がある現状なのだそうです。

 食物、とくに甘いもののない時代に育ったわたしの世代からみれば、一歳のこどもの虫歯なんて信じがたいことなのですが、乳歯の虫歯は、いずれ生え替わるのだから、と安易に考えている母親が、あまりにも多いということなのです。

 そういわれてみれば、娘たちが幼かったころをふり返ってみても、虫歯が病気だという意識はあまりなかったし、虫歯になれば治療すればいい、予防といっても朝晩、こども用の小さなブラシに、これまた果物の味のある歯磨きをつけてチョコチョコと磨いてやったくらいのものでした。

 しかし、これをしていた親は、まだマシな方だそうで、歯が生えてこの方、磨いたこともないため、歯全体が炭のように真っ黒になっているこどもや、虫喰いでボロボロになったまま、親の無知から放りっぱなしのこどもなど、データでみせられると、なるほど身震いするほど恐しいと思いました。

 けれでも、です。虫歯がそれほど蔓延しているからといって、水道水にフッ素を入れれば事は解決する、という考えはどうでしょうか。フッ素が添加物といえるかどうかわかりませんが、ともかく、わたちたちがいま口にするものには、あまりにも添加物が多すぎます。これ以上、水にまでフッ素が混入されたなら、選ぶ権利もないわけで、水アレルギーをおこしかねません。

 「いま、あなた方の飲んでいる水にだって、塩素をはじめいろんな薬品が混入されているのです。それに気づいてないだけなんですよ」

 学者先生、それじゃ、まるで、水にフッ素を入れたくらいで目くじらを立てるな、といわんばかりのおっしゃりようじゃありませんか。

 「WHO(世界保健機構)の規定で、水中のフッ素を0.6PPMの濃度にするようきめられているのです」

 「いや、宝塚の一部のように0.8PPMもフッ素の濃度があって、斑状歯が問題になっている地域は、どうなるのですか」

 「そういう所は薄めるようにして、また薄いところは、もっと濃度を……」

 わたし自身、この研究がいけないとは、決して思いません。けれど、総てがデータどおりにいくものではないし、まして地元からの告発をオーバーな表現と一笑に付す学者の態度に、わたしはなにか割切れぬものを感じました。自分の研究を遂行するためには、反対の立場は軽視してしまおうとする姿勢に、そしてそれが行政の中に入りこんで、学校のブクブクうがいのように、強制する結果になることの危惧を感じるのです。

 この番組を観たといって、宝塚のある視聴者の方が電話をくださいました。

 「学者は地元へ出かけて調査した結果、たいしたことじゃない、というような発言をしていたけれど、実際に斑状歯は多いし、昔から骨折が多いのは事実なのです」

 こういう地元の声を拾いあげて、データを作りあげてこそ意味がある、とわたしは思うのですが、実際には、こうした声は見過ごされるか、さもなくば目隠しされてしまうケースが意外に多いのじゃないでしょうか。

 「昔からあるのだから、なにもいまさら、ぼじくり出して事を大きくしなくても…」

 といった事なかれ主義が、まだまだ根強いのじゃないでしょうか。

 それと、水にフッ素を入れれば虫歯は防げる、と考える以前に、これから母となる人に健康な歯の大切さを啓蒙していく方が、より必要じゃないかと思うのです。虫歯に無知な母親を少しでもなくすことに、学者さんたちが留意してくださったら、と思うのです。

※1977年9月2日号掲載

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