8/4~公開 「沖縄スパイ戦史」~知られざる沖縄戦の姿が示す“戦争の真実”とは?~

 ジャーナリスティックな視点で、沖縄発のドキュメンタリー映画を発表している三上智恵監督が、琉球朝日放送の後輩でもある大矢英代監督と共同制作した最新作「沖縄スパイ戦史」が、8月4日(土)から第七藝術劇場、京都シネマで公開される。

 在日米軍専用施設の7割以上が集中する沖縄の現状を、高江や辺野古など基地反対闘争の闘いの最前線に取材した三上監督の作品は、「標的の村」(2013年)、「戦ばぬ止み(いくさばぬとぅどぅみ)」(2015年)、「標的の島 風(かじ)かたか」(2017年)に次いで4作目となる。

©2018『沖縄スパイ戦史』製作委員会

 本作で明かされる沖縄戦の姿は、これまでほとんどメディアで取り上げられることがなかったものだ。ヒューマニズムとは対極にある冷酷で残虐な戦争による傷口は、戦後70年以上たった今も癒えることなく、どくどくと血を流し続けているようだ。裏山で戦死し遺体も還らぬ息子の魂に寄り添う母、戦から帰らぬ息子を待って何年も曲がり角に立ち続け心に変調をきたした母、生き残ったものの戦後PTSDで心が壊れた息子を座敷牢に閉じ込めざるを得なかった母……私たちはそこから何を読み取るべきだろうか。

 

 沖縄戦は第2次世界大戦末期の1945年3月末に米軍が慶良間諸島に上陸した時から始まる。米軍は4月1日には沖縄本島中部の西海岸に上陸し、島を南北に分断。今日「沖縄慰霊の日」と呼ばれる6月23日に第32軍・牛島満司令官が自決するまでの3カ月足らずの間に、民間人を含み20万人以上が死亡する激しい戦闘が繰り広げられた。じりじりと南部に追い詰められた日本軍と住民たちの戦いの様子は、これまで様々なメディアが取り上げてきた。では、早期に米軍に制圧されたといわれてきた北部では、何が起こっていたのか?

 三上智恵監督は、10代半ばの少年たちが「護郷隊」として組織され、故郷の山に籠り、進軍してきた米軍に対してゲリラ戦を挑んでいたことを明らかにする。護郷隊の生き残りの89歳の老人の証言を補完するように、米軍が撮影したフィルムがスクリーンに映し出される。その粗いモノクロの無音画像は、むごい戦争の姿を雄弁に語る。

©2018『沖縄スパイ戦史』製作委員会

 地元の少年たちを使ったこのような「秘密戦」を率いたのは、日本軍の特務機関「陸軍中野学校」出身のエリート青年将校たちだった。沖縄戦が始まる半年以上前、1944年の晩夏、大本営の命令を受けて42人の「陸軍中野学校」出身者が沖縄にやってきた。その一人、偽名を使って波照間島の学校に青年指導員として赴任した人物は、米軍の沖縄上陸が間近に迫っていた頃、軍刀を抜き、住民にマラリアの有病地帯・西表島への強制移住を強要。島民の1/3にあたる500人が「戦争マラリア」で命を落とした。

 一方、兵力が限られる中、日本軍は住民たちを様々なかたちで利用した。そして「軍の機密を知っている住民が敵に捕まればスパイになる」と疑心暗鬼に駆られた敗残兵と協力者たちは、それを未然に防ぐためにスパイになりそうな住民を始末していく……。そこには「国民を守る」軍の姿はなく、「助け合い協力し合う」住民たちの姿もない。

「2012年に琉球朝日放送に入社し、報道記者として初めて三上さんに連れて行っていただいたのが、『標的の村』の高江の現場でした」と話す大矢英代監督(左)は、本作が初映画監督作品。三上智恵監督は「今回は直球勝負の作品です。たくさんの人に見てほしい」

 三上監督は言う。「戦争を知る世代が少なくなり、各地の災害救援に自衛隊が頑張る姿が数多く報道される中で『軍隊は住民を守らない』という沖縄戦の教訓に懐疑的な人が増えている。しかし実際に沖縄戦では、軍は住民を守らなかった。敵に勝つことが至上命令の軍の論理に、住民たちも怒涛のように巻き込まれ、悲惨な結末を迎えた。なぜそうなったのか? その理由をきちんと検証し、当時の日本軍と今の自衛隊が同じ論理で動いているのかどうなのかを知らないと、この国で安心して眠れなくないですか」

 波照間島の「戦争マラリア」を取材した大矢監督は、この問題を長年追求してきた元沖縄県議会議員が約30年前に、住民たちを強制移住させた本人に電話取材したテープを映画に登場させた。30分余りの録音テープの中に、命令を忠実に実行した当人から島の人に対する謝罪の言葉は一切なかったという。「これを島の人に聞かせるのは私自身もつらいが、戦後も、自分がしたことの意味を問うことなく生きてきた人なのだと思った」

 「『やったことは悪いが、命令に従っただけの人は悪くない』という言説は、今もすぐ聞こえてくる。最近では日本大学アメフト部の悪質タックルの時にも聞こえてきた。しかし、もしそうだとしたら、同じ過ちを防ぐ力はどこから生まれてくるのか。たとえ命令だったとしても、やったことは悪いこと。そこをきちんと反省しないと、きな臭い世の中になることを防げない」と三上監督は結んだ。

【公開情報】8月4日(土)から第七藝術劇場、京都シネマ、順次元町映画館 にて公開。




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