小笠原先生! 介護の心構えを教えてください! 「診療所の窓辺から」4月下旬に刊行

 いつかやってくる、家族の老い。いざ介護するにあたっては、近い存在ゆえのコミュニケーションの難しさなど、葛藤は少なくありません。高知県四万十市で地域医療に取り組む内科医・小笠原望さん(65)に、しなやかな介護の心構えを聞きました。(伊藤真弘)

内科医・小笠原望さん

 

できることはできるし できんことはできん

 

 日本屈指の清流・四万十川をはじめ、豊かな自然に抱かれた四万十市。高齢化が進む町のかかりつけ医として地域医療を支える小笠原さんは「住み慣れた環境で最期を迎えたい」という高齢者の願いに寄り添いながら、在宅での看取りを重ねてきました。

 「ぼくがこれまで見てきた介護の達人は、必ず〝少しいい加減〟。『できることはできるし、できんことはできん』という良い意味での割り切りのもと、生活ペースを保ちながら続けています」。とはいえ、思った通りにいかないのが介護。それには「何かの時には代われる人を。一日はさぼってもいい気持ちで」と〝不良のすすめ〟を強調します。「ぼくの尊敬する介護の達人の一人は、気管切開の夫を19年にわたり看ておられますが、合間に〝ちょっと抜ける時間〟をつくっている。無理をしないことが一番大事と知っているからなんですね」

 

優しくなれない時は 無理に頑張らない

 

 無理をしない――。言うのは簡単でも、必死な時はつい頑張りすぎてしまいがち。「無理が続いて体にも心にも疲れが残ると、優しくなれなかったり、ちょっとした言葉にカチンときたり……。そんなことは誰しもあります。優しくなれないと思った時が、疲れている時。日々介護を続けられるのは、優しい気持ちがあるからこそ。そんな時に頑張ると自分も大変ですが、相手にも悪影響です。ショートステイの利用などで一息入れ、疲れを疲れと認め、解消することを優先しましょう」。疲れをチェックするには「人との会話が一番」といいます。「自分は今どんな状態か? 自分だけで考えてもわかりません。人との会話を通して相対的に、俯瞰するように自分を観察する習慣をつけましょう」

 自分の生活を成り立たせながら続けるのが介護の大前提、が小笠原さんの考え。「そこまでしたら自分がもたないというポイントを見極めるのが大切。生活が成り立たず、自分がつぶれては何もなりません。そう、『できることはできるし、できんことはできん』です」

 

息が詰まった日常を緩める 第三者の存在

 

 身内とはいえ、一対一の関係が絶えず続くと息が詰まることもあります。他人を家に上げたくないという理由から、一人で介護を続けるケースも少なくありません。「訪問介護などによる第三者のかかわりは、息が詰まった状況を緩めてくれます。素で付き合う家族どうし、感情がささくれ立って対処に困ることでも、逆に『仕事』だから対処できることもあるはず。プロの第三者に入ってもらうと良いのはそのためです」

 外来診療に在宅医療にと、日々四万十を駆けめぐる小笠原さん。65歳の今も「人間ってすごい、人間ってここまでなれる」と心を揺さぶられる臨床現場が何よりの原動力といいます。「みんな口にしないだけで、家庭も仕事もすべて〝満点〟の人はいません。どうか、お年寄りを抱えているという、重たい気持ちの毎日になりませんように」

 

小笠原流 おさえておきたい介護のツボ

 

●「汚れる」ことをいとわない

 少々不潔なのは当たり前。おむつが見えない所に隠してあったり〝きれいすぎる〟家庭は、長く続けられないことが多い気がします。汚れることをいとわない気持ちがないと、介護は成り立ちません。

 

●ケアマネジャーと上手に付き合う 

 適切な介護サービスを受けられるよう「ケアプラン」を作成するケアマネジャーは、重要な「介護のキーパーソン」。きちんと希望を伝え、うまく付き合っていきたいもの。自分に合わないと思ったら変更は可能です。

 

●施設入所は「放棄」ではない 

 家でこれ以上看られないとなった時、施設への入所は「放棄」ではありません。無理であれば施設に入った方が介護される側も幸せ。また、本意ではないのに都会に住む子の元へ引き取られる人もいます。介護保険サービスや近所の人の支えで暮らす親が、もし一人で亡くなったとしても、本人が望むならそれでいいと思います。

 

おがさわら・のぞみ●1951年高知県土佐市生まれ。76年弘前大学医学部卒。高松赤十字病院などを経て97年大野内科(四万十市:旧中村市)。2000年同院長。地域医療に携わりながら、在宅医療、神経難病、こころのケアに取り組む。

 

小笠原さんの書籍が発行されます! ~4月下旬 全国の書店で発売~

 

「診療所の窓辺から」 小笠原 望 著 

 

 朝日新聞社の月刊誌「スタイルアサヒ」で「診療所の窓辺から」を連載中の小笠原さん。老いやいのちについて優しく語り掛けるエッセーは、連載8年目の今も全国から反響があります。過去掲載分からよりすぐった58話を収録した本を刊行。介護のヒントになる内容も。

1,620円 四六判並製 200㌻ ISBN:9784779511523

発行所:株式会社ナカニシヤ出版

企画・編集:株式会社アサヒ・ファミリー・ニュース社

予約注文はお近くの書店またはナカニシヤ出版 ℡075・723・0111まで

 ※ナカニシヤ出版のHPからも予約注文可

(朝日ファミリーデジタル特設ページ http://www.asahi-family.com/s/  からリンクがあります)

 




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