郷愁だけじゃない。大阪で「炭鉱の記憶と関西-三池炭鉱閉山20年展-」を開く意義とは?

 かつて「黒いダイヤ」と呼ばれ、日本の近代化と第二次世界大戦後の復興を支えた石炭産業。福岡県大牟田市と熊本県荒尾市にまたがる地域に広がり、日本一の出炭量を誇った三池炭鉱の閉山から20年となる今年、「炭鉱の記憶と関西-三池炭鉱閉山20年展-」が、大阪市中央区のエル・おおさかと関西大学博物館の2会場で開かれる。

 

雲仙を望む四ッ山社宅 戦前の絵葉書(提供:大牟田市史編さん室)
「炭鉱の記憶と関西-三池炭鉱閉山20年展-」のポスターを持つ千本沢子さん(左)と谷合佳代子館長。炭鉱住宅で暮らす子どもたちの笑顔に引き付けられる=4月19日、エル・ライブラリーで

 

 「関西には炭鉱がありませんが、三池炭鉱と関西は、実は深いつながりがあるんですよ」と今回、両会場の主催者に名を連ねる大阪産業労働資料館エル・ライブラリー(エル・おおさか4階)の千本沢子さんは言う。

 「総資本対総労働の闘い」と呼ばれて日本中の関心を集めた三池争議が、労働側の敗北に終わった1960年以降、三池炭鉱の離職者と家族の多くが関西に移住してきたという。

 

 エル・ライブラリーを会場に、過去に2回、三池炭鉱に関連した企画展が行われた。

 1回目は2010年10~12月、法政大学大原社会問題研究所の全面協力で行った「特別展示 三池争議から50年」。2回目は2013年11月9~16日の「三池炭鉱炭塵爆発50年展」。争議から3年後に起こった炭塵(じん)爆発事故を取り上げ、今も一酸化中毒に苦しむ労災被害者と家族の存在を伝え、労働と安全を考えさせる市民有志による企画で、わずか6日間の会期にもかかわらず222人が来場した。

 「過去2回の展示を見た後の皆さんの熱気がすごかったんです。三池炭鉱で生まれ育った人、三池争議を支援したという大阪の人、炭鉱とは無縁だったが大牟田出身だという人……。そんな人たちが訪れて、涙を流しながら話し込んでいきました」(千本さん)

 

 熱い思いを抱いた来場者に研究者らが加わって誕生した「関西・炭鉱と記憶の会」が、今回のエル・ライブラリーでの展示のもう一つの主催者だ。

 三池での合宿や4回に及ぶプレイベントを経て、準備に3年を費やした「炭鉱の記憶と関西-三池炭鉱閉山20年展-」は、過去2回とは規模の異なる大掛かりなものとなる。会のメンバーの一人、前川俊行さん(64)は、貴重な207点のコレクションを出展する。前川さんは三池炭鉱の緑ヶ丘社宅(荒尾市)で生まれ育ち、小学生の時に家族で三池を後にした。その後、岐阜、京都などに移り住み、現在は滋賀県彦根市に住む。

 

三池主婦会20周年記念に作られたタオル(1973年ごろ 三池炭鉱主婦会製作 「前川俊行コレクション」から)

 

 

 

 三池炭鉱閉山7カ月前の1996年9月、ダイナマイトで爆破倒壊していく四山鉱竪坑の姿をテレビで見て、前川さんは衝撃を受けた。「ふるさとが無くなってしまう。父母が三池で生きてきた証しを残したい」。翌年、ホームページ「異風者(いひゅうもん)からの通信」を立ち上げたところ、全国の炭鉱関係者から様々なメッセージや資料が寄せられてきた。それらの貴重な資料が今回、自費で集めた資料とともに「前川俊行コレクション」として展示される。

 

〇前川俊行さんのホームページ「異風者からの通信」はコチラ http://www.miike-coalmine.org/

 

 三井財閥に大きな富をもたらした三池炭鉱の労働者たちは、炭鉱住宅と呼ばれた社宅に住み、働く仲間同士が家族ぐるみの強い絆を育んできた。古くから多くの日本人が営んできた農村のくらしとは大きく違う炭鉱住宅のくらしは、「フラットで遠慮のない、つながりのあるくらし」(千本さん)だった。文化的にも豊かで、子どもたちの自主サークル活動も盛んだったという。

1960(昭和35)年に撮影された坑内の写真(撮影:三池職組 提供:大牟田市石炭産業科学館)

 展示は、そんな暮らしのあり様や、関西の労働運動とのつながりを示すもののほか、炭鉱と石油化学コンビナートという2大産業で潤った都市・大牟田の文化にも及ぶ。大牟田出身の少女漫画家・萩尾望都、少年時代を過ごした映画監督・森崎東らのエピソードも含まれる。

 

 2015年、三池炭鉱は「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の一つとしてユネスコの世界文化遺産に登録された。有明工業高等専門学校の学生たちが、三井三池炭鉱の技術を継承する試みも始まっている。

 

 千本さんは「今回は、関西大学でも巡回展が行われることになりました。炭鉱のことを全く知らない若い世代の人たちにも、じっくり見てほしい。一つの産業がなくなるとは、どういうことか。終わったことに対する郷愁だけでなく、そこから未来に向かう取り組みを、どう作っていくのかも考えながら見てほしい」と話す。

 

【炭鉱の記憶と関西-三池炭鉱閉山20年展-】

2017年5月5日(金・祝)~9日(火)10時~19時

エル・おおさか(大阪府立労働センター)9階ギャラリー

エル・おおさかへのアクセスはコチラ

(主催:エル・ライブラリー、関西・炭鉱と記憶の会)

 

2017年6月6日(火)~30日(金)10時~16時(入館は15時30分まで)※日曜休館(但し、6月11日は開館)

関西大学博物館(千里山キャンパス簡文館)

関西大学博物館へのアクセスはコチラ

(主催:関西大学経済・政治研究所、エル・ライブラリー)

 

入場無料

 

後援:福岡県、大牟田市、荒尾市

協力:大牟田市石炭産業科学館、大牟田市立図書館、田川市石炭・歴史博物館、法政大学大原社会問題研究所ほか




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