わが街の健康長寿の秘密とは

 4月に厚生労働省が公表した市区町村別生命表(2015年)。阪神・北摂エリアの多くの自治体が、平均寿命が長い市区町村の上位を占めたことをご存じですか。2市の取り組みを追うと、健康長寿を支えるものが見えてきました。(伊藤真弘)

 

宝塚市:秘けつは「市民力」待望の施設も完成

放射線治療装置「トモセラピー」
西日本初導入の放射線治療装置「トモセラピー」はピンポイントの照射に優れる。市では各種検診を通して早期発見・治療の重要性も広める

 4月、宝塚市立病院に放射線治療と化学療法ができるがんセンターが完成した。特に、一定期間に何度も通院の必要がある放射線治療はこれまで市外でしか行えず、完成により市民の移動負担は大幅に軽減された。がんに関する様々な相談ができる支援センターも充実する。専門看護師のほか、がんライフアドバイザーにお金と仕事の相談ができ、乳房切除後や脱毛など外見サポートの相談もできるきめ細かさだ。気軽に立ち寄れるがんサロンもある。ハード面の拡充に加え患者のメンタル面も支え、生活の質の向上に役割を果たす。

 

いきいき百歳体操
重りを使って体力をつける「いきいき百歳体操」。高齢になってもいきいき暮らせる都市を目指す「エイジフレンドリーシティ」~「お互いさま」があふれるまち・宝塚~を推進している

 介護予防につながるとして全国に普及する「いきいき百歳体操」は宝塚でもさかんだ。市内で生まれたグループは約120。道具の貸し出しや指導員の派遣など、市はグループ結成直後を中心にサポートするが、以降の継続は自主性にゆだねる。しかしこれまで解散したグループはないという。日常の見守りやサポートが必要なメンバーのためにできることを話し合い、助け合う習慣のあるグループもある。「何事も自分たちでやっていく『市民力』の高さも、健康寿命に影響しているのでは」と高齢福祉課の担当者は話す。

 

吹田市:良い習慣づけを大切にリレーで受け継ぐ

スプラッシュボール
年齢を問わず楽しめる「スプラッシュボール」は吹田市発祥のニュースポーツの一つ

 吹田市には、すべての世代がスポーツに親しめる豊かな土壌が広がる。市が独自に養成した「社会体育リーダー」の人材を中心に、各小学校区で体育振興(協議)会が組織され、市内35地区で毎月のようにスポーツ行事を企画運営する。ダーツとペタンクの要素を取り入れた「スプラッシュボール」。シャトルをラケットで打ちネットに入れる「シャトルゴルフ」。これらは吹田市発祥のニュースポーツで、市をあげての交流大会も行われる。
 保健センターでは40歳〜60歳に、胃・肺・大腸がん検診のはがきを毎年送付。はがきが届く誕生月の受診を多くの市民が習慣づける。特定健診の制度が始まる前から生活習慣病予防のメッセージを広めるなど、現役世代が自分の体をチェックする機会を増やす努力を続けてきた。

ひろばde体操
「ひろばde体操」では、ストレッチや全身運動を取り入れた「吹田はつらつ体操」で楽しく体を動かす

 高齢者などが定期的に体を動かせる「ひろばde体操」は市内8カ所で行われる。週1回、決まった曜日と時間に集まる参加者の間では自然に交流も生まれ、外出のきっかけ作りにもなっている。ひろばde体操をはじめ介護予防に取り組む高齢福祉室の担当者は「健診受診や運動の習慣を、高齢になっても継続してもらえるよう働きかけるのが役割の一つ」と話す。子どもから成年、高齢者へ。健康長寿のリレー体制が確立されていることは吹田市の大きな強みだ。

 

健康・医療のモデル都市「健都」まちづくりが着々と

 「健康・医療」をコンセプトにした街として、大きな注目を集める「健都」。一部施設がいち早く稼働し、市立吹田市民病院など今年中の開院を控える施設もある。健康寿命の延伸をリードする街の姿が、次第に見えてきた。

イラスト

 国立循環器病研究センターや市立吹田市民病院をはじめ、健康づくりを学び実践できる公園、複合施設、大規模分譲マンションなど、多様な事業主体で構成される北大阪健康医療都市(愛称:健都)。JR岸辺駅の北側、吹田市と摂津市の両市にまたがる旧国鉄・吹田操車場跡地では、各施設や事業に「健康・医療」のコンセプトを貫いたまちづくりが進んでいる。
 循環器病の予防と制圧に取り組む国立循環器病研究センターは19年7月に北千里から移転予定。市の中核病院の役割を果たす市立吹田市民病院は今年12月に開院を予定する。さらに最先端の健康・医療関連の研究機関や企業が進出を予定する「健都イノベーションパーク」構想も着々と進行し、一大医療拠点が形成されつつある。各施設の医療者、研究者が活発に交流することで、いずれは循環器疾患分野の予防・医療・研究で世界をリードする地域を目指す。

 

健康づくりを公園で

国立循環器病研究センター
吹田市藤白台から移転する国立循環器病研究センター

 これら医療機関の知見がまちづくりに生かされるのも特徴だ。3月末にオープンした健都レールサイド公園内の「健康増進広場」には、国立循環器病研究センターと市立吹田市民病院が協力・監修した健康遊具27基を設置。腰痛対策のためにストレッチを中心とした遊具が集まるゾーンや、筋肉を鍛えるゾーンなど、体の状態に合ったエリア分けがされる。
 公園には、ゴムチップが敷かれたウォーキングコースも整備された。体力や年齢に合わせた運動負荷で、1周約200m~約490mのウォーキングができる4コースを設定。利用者が脈を測れるよう、園内の大時計は秒針つきだ。これまで両医療機関の医師を講師に招き、コースを使ったウォーキングイベントを複数回開催。自己検脈をしながら歩いたり、ノルディックウォーキングを体験したり、「歩く」ことの重要性を市民に広める場として機能している。

ノルディックウォーキングの効果や
楽しさを実感
多彩な健康遊具がある健康増進広場




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