ふるさと納税 届け わが街の思い

 自分が生まれ育った故郷や、思い入れのある自治体へ寄付をする「ふるさと納税」。税金控除の際は、1月〜12月に寄付した金額を確定申告することから、申し込みは12月に多いのだとか。最近は寄付先の自治体からもらえる高価な返礼品に注目が集まりがちですが、返礼品を通して街の魅力を発掘する取り組みも広がっています。阪神間・北摂の街はどんな思いを込めているのでしょうか。

 

〝らしさ〟を凝縮。転入者の手引きとしても ~芦屋市の場合~

 [返礼品の開始]2015年11月[2015年度の寄付金額/件数]2779万5千円/548件

 返礼品のカタログには洋菓子やワイン、服飾品などがずらり。「芦屋発祥のもの、芦屋にしかないもの。『芦屋らしさ』が選定の基準です」と船曵純子さん(芦屋市経済課)は話す。寄付集めが第一義ではなく、返礼品を通じて市の魅力、文化的な側面を広く知ってほしいと願う。

曽祖父の記憶を「遊びに行くといつもあめをくれる、大柄で優しいおじいちゃん」と振り返る桑田敬司さん。「写真のように、ずっと残る返礼品が増えるといいですね」
曽祖父の記憶を「遊びに行くといつもあめをくれる、大柄で優しいおじいちゃん」と振り返る桑田敬司さん。「写真のように、ずっと残る返礼品が増えるといいですね」

 芦屋らしさを物語る返礼品の一つが、写真店「ハナヤ勘兵衛」(芦屋市前田町)による写真撮影だ。屋号のハナヤ勘兵衛(本名:桑田和雄)とは、芦屋市に1929年から店舗を構えた写真家。当時から大胆なクローズアップなど前衛的な技法を取り入れ、特に中山岩太らと結成した「芦屋カメラクラブ」は写真界に大きな影響を与えた。まさに阪神間モダニズムをリードした人物の系譜を継ぐ写真店が、寄付の「返礼品」として肖像写真や芦屋神社での記念写真を撮影してくれる(※)。ハナヤ勘兵衛のひ孫にあたる4代目店主の桑田敬司さんは「文化度が高い芦屋ならではの返礼品に、ひと役買えるのは光栄」と話す。

 先日も、七五三を迎えた女の子を芦屋神社で撮影したばかり。「市内には他にも多くの撮影スポットがある。今後は芦屋神社以外にも広げ、写真を通じて芦屋の魅力を外へと発信できれば」 

国道2号沿いに店を構えるハナヤ勘兵衛。山小屋風の外観は1932年から変わらない
国道2号沿いに店を構えるハナヤ勘兵衛。山小屋風の外観は1932年から変わらない

 

 波及効果は市内にも。「若い世代の流入も多く、芦屋らしさが凝縮されたふるさと納税のカタログは、引っ越してきたばかりの土地の魅力を知るツールにもなります」(船曵さん)。

※肖像写真は3万円から。芦屋神社での出張撮影は10万円からの寄付で選べる

 

 

 

 

 

 

返礼品をきっかけに〝いい関係〟を ~茨木市の場合~

[返礼品の開始]2015年12月 [2015年度の寄付金額/件数]532万500円/210件

 雰囲気たっぷりのプラネタリウムで二人きり、満天の星を心ゆくまで鑑賞する……。思わずうっとりするようなシチュエーションだが、これもれっきとした茨木市の「返礼品」。10万円のふるさと納税で、市立天文観覧室のプラネタリウムを90分間貸し切りにできる。

茨木市立天文観覧室のプラネタリウムは57席。年間約1万人が訪れる
茨木市立天文観覧室のプラネタリウムは57席。年間約1万人が訪れる

 43年前の開館から活躍し、室内で存在感を放つ投影機は今も現役。「手動式なので、思い出の写真などを持ち込んでもらえば、オーダーメイドで投影できますよ」と解説員の中島健次さんは話す。誕生日や結婚記念日の夜空を再現するなど様々なアレンジが可能。もちろんすべて中島さんたち解説員の心のこもった生解説つきだ。

 古くから芸術家や文豪が育った街として同市は「文化・芸術のまち茨木」の発信に注力する。返礼品のラインアップにもそのことが見て取れる。在住の版画家・木村光佑さんや、出身の現代美術作家・ヤノベケンジさんの作品は人気が高く、品切れになるほど。

解説員の中島健次さんは、プラネタリウムで行った自らの結婚式をプロデュースした経験も
解説員の中島健次さんは、プラネタリウムで行った自らの結婚式をプロデュースした経験も

 返礼品を提供する市内事業者からは「市の魅力アピールになり、提供できてよかった」という声を多数得ている。「茨木が好きで、地域に貢献したいという事業者が多く、新たに提供したいという希望も増えています」と中島航さん(茨木市まち魅力発信課)は市域経済活性への手ごたえを感じている。集客力の高い観光地は多くないが「返礼品が茨木を知ってもらうきっかけになり、今後の“いいお付き合い”につながればうれしいです」と話す。(伊藤真弘)

 

わが街らしい返礼品あれこれ

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空港のおひざ元・伊丹市では、機内食としても提供しているカップうどんを返礼品の一つに
三ツ矢サイダー発祥の地・川西市では、市限定のアソートセット(6種24本)を10月20日から返礼品に加えた
三ツ矢サイダー発祥の地・川西市では、市限定のアソートセット(6種24本)を10月20日から返礼品に加えた

 

~いま一度おさらい  ふるさと納税のこと~

(総務省「ふるさと納税ポータルサイト」HPから抜粋)

しくみは? 

 自治体に寄付をした場合、確定申告を行えばその寄付金額の一部が所得税および住民税から控除される。一方ふるさと納税では、自己負担額の2,000円を除いた全額が控除の対象となる(収入や家族構成などに応じて一定の上限あり)。例えば、年収700万円の給与所得者で扶養家族が配偶者のみの場合、30,000円のふるさと納税を行うと、2,000円を超える部分である28,000円(30,000円-2,000円)が所得税と住民税から控除される。

控除は? 

 控除を受けるには原則として、ふるさと納税を行った翌年に確定申告を行う必要がある。ただし2015年4月から、確定申告の不要な給与所得者などは、ふるさと納税先の自治体数が5団体以内である場合に限り、ふるさと納税を行った各自治体に申請することで確定申告が不要になる「ふるさと納税ワンストップ特例制度」が始まった。




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