世界が注目「ファツィオリ」のピアノ フェニーチェ堺に登場
創業者ファツィオリ氏も来日 美しい音色が自由都市に新たなページ

 フェニーチェ堺(堺市民芸術文化ホール)は、南大阪最大の約2,000席の大ホールなど充実した設備と、国内外から有力アーティストたちが続々と登場する豪華な公演ラインアップが話題を呼び、今年10月のグランドオープン以来、連日多くの観客でにぎわいを見せている。

 詰めかける音楽ファンをうならせているのは、出演者たちの熱演だけにとどまらない。奏者の個性を最大限に引き出すグランドピアノも大きな存在感を発揮している。中でも、計5台が用意されているうち、注目されているのがファツィオリ社(イタリア)のグランドピアノだ。近年、世界各国の著名なピアノコンクールで相次いで公式ピアノに認定され、世界的評価が高まっているファツィオリピアノ。フェニーチェ堺のような大規模ホールへの導入は国内初とあって、ファツィオリ社の期待も大きく、11月には同社創業者のパオロ・ファツィオリ社長が同ホールを訪れ、コンサート奏者やホール関係者と交流するなどして、自慢のグランドピアノの門出を見守った。

フェニーチェ堺に導入されたピアノを前に、「とにかくいい音をお届けしたい」と意欲を見せるパオロ・ファツィオリさん

 家具職人の家に生まれ、ローマ大学で工学を専攻。ロッシーニ音楽院でピアノを学び、ローマ音楽院で作曲の学位を得たパオロさん。親から受け継いだ職人気質、工学の知識、そして音楽の関心は、「世界一のピアノを作る」という夢を育み、独自の音の探求と画期的な技術革新を経て、1981年、ファツィオリ社の創立にこぎつけた。「クリアでありながらパワーがあり、音が心地よく減衰して、適度な余韻に浸れるピアノを作りたかった」とパオロさんは振り返る。

 老舗が幅を効かせる業界にあって、80年代の創業は“新参者”。しかし、イタリアが誇るオペラの真骨頂でもある「ベルカント」から着想を得た、ダイナミックで幅の広いファツィオリピアノの音色は、「一台でオーケストラのような音がする」と高い評価を獲得。音色を変えることなく音量だけを小さくできる4番ペダルの特許も注目され、着実に支持を広げていった。パオロさんは「ピアノは18世紀に完成された楽器とされていました。しかし、まだいろんな可能性を秘めていると感じていた。もっといい音を作りたい。その一心でビジョンを持って取り組んできました」と話す。

 見事な低音域を持ち、中高音域も全くそれに引けを取らない上品なファツィオリピアノの音色は、熟練した40人の職人による手作りから生まれる。厳選した高級素材をふんだんに使用。響板には、弦楽器の名器、ストラディバリなどと同じ、イタリアのフィエンメ渓谷から切り出した赤トウヒを採用。温度管理された部屋で最低2年も寝かした上、特許技術によって3層構造にすることで堅牢さが増すとともに、可能な限り、全ての音域において均一に響板が振動・増幅して、安定した響きを作り出す。透明感に満ち、強弱どちらの音も躍動的に広がるファツィオリピアノの特長は、このあたりに秘密がある。

 音色のほかに、外観にもこだわりが深い。一部を除き、蝶番などの金属部分には金めっきを施し、いつまでも美しい輝きを保つ工夫も凝らされている。パオロさんは「ピアノはオーケストラの音も左右する、まさに楽器の王様。一つひとつの音にしっかりと存在感がありながら、美しく交ざり合い、さまざまな表現を可能にしてくれるファツィオリのピアノで、音楽と表現の未来をさらに広げていきたい」と語る。

「これからも堺の街とつながっていきたい」と
話したパオロ・ファツィオリさん

 そんな輝かしい系譜を持つファツィオリの「F308」が、フェニーチェ堺に登場した。11月3日に大ホールで上演された「ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団」では、反田恭平氏が「F308」を選択。パオロさんも駆けつける中、アンドレイ・ボレイコ氏指揮のもと、オープニングシリーズにふさわしい華やかで重厚な演奏を聞かせた。公演直前には、ステージ上でパオロさんと反田さんが対面。「最高の反応を提供してくれる」と各国のピアニストを魅了しているタッチと響きを確かめ合っていた。

 ファツィオリピアノはこれまで国内のホールに9台が設置されたが、フェニーチェ堺のような2,000席規模のホールへの導入は初めて。中世に海外から先進文化をいち早く取り入れ、貿易・商業都市として栄えた堺。「ものの始まりなんでも堺」とも称されたこの街に生まれたホールならではの意欲的な挑戦だ。「ピアノは一台一台が我が子と同じ。ホールの成長とともに音も成熟していくでしょう。堺は海が見えてすてきな街。ファツィオリピアノを継続してチェックし、堺の皆さんと長くお付き合いしていきます」とパオロさんは話していた。




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