【おうちでミュージアム】
中之島香雪美術館「香のいろは-道具とたどる香文化」
香の楽しみは豊かな日常の中に

「若松桜梅散蒔絵香箪笥」(江戸~明治時代)村山コレクション

■「香」は生活の中で楽しむ文化 多彩な使い方に「いろは」で迫る

「香」という言葉は、「香道」や「香席」を連想させるため、 敷居が高いイメージがあるかもしれません。しかし江戸 時代の絵画には、寝屋で寝そべりながら香を焚いたり、 髪の毛に香のかおりを移していたりする様子が描かれて おり、本来は生活の中で楽しむ日常に根差した文化であっ たことがわかります。

香道具は、仏を供養するための道具から、かおりを衣服や空 間にくゆらせるための道具、数種の香木を聞き分けて遊ぶため の道具まで、多彩に展開しています。これらは蒔絵などの技法で 美しく飾られ、見るだけでも楽しいものですが、遊び方や道具の 役割を理解することで香の魅力をさらに知ることができます。

展覧会は、「い」=いろいろな香道具、 「ろ」=朗笑(ろうしょう)しつつ香を聞く、「は」=はじまりは沈香、「に」=においであそぶ、「ほ」= ほかにない香道具と婚礼調度の香道具の5章で構成され、日本で花開いた香文化を、香道具の使い方を切り口として「いろは」から丁寧に紹介しています。

現在は臨時休館中で、実際にご覧いただくことは叶いませんが、Twitterで展示の様子を随時アップしていますので、ぜひ見ていただきたいと思います。@kosetsu_museum

■他に類を見ない豪華さ、美しさに感慨

「若松桜梅散蒔絵香箪笥」(わかまつさくらうめちらしまきえこうだんす)は、村山家に伝わる蒔絵の施された豪華な香箪笥です。ここまで大型の一具は珍しく、他に類例を見ません。細部にわたり調査していくと、製作された経緯を推測することができる大変興味深い作品であることもわかりました。

長い間蔵の中で眠っており、当初はカビに埃にと大変汚れていましたが、丁寧に手入れをすると見違えるように美しくなりました。本作のお披露目も兼ねた香道具の展覧会をしたらどうかという提案が、「香のいろは-道具とたどる香文化」開催のきっかけとなりました。

本展は、一般的にあまり馴染みのない香道具の展示ということで、担当者自身も手探りのなか、いかに作品をわかりやすく魅力的に伝えるかという点に苦心しました。また、本香箪笥のように香道具は内容品がたくさんあることが多く1件でも総数が10点以上になることがあります。

ゆえに、作品の撮影や展示は想像以上に時間のかかる大変な作業でした。香道具の展覧会が少ないといわれる所以と痛感しました。しかし、ひどく汚れていた香箪笥が展示ケースが宝箱に思えるほど美しく並んだ姿をみたときは、感慨深いものがありました。

(中之島香雪美術館 学芸員)

中之島玄庵

《中之島香雪美術館》
「中之島香雪美術館」は、香雪美術館(神戸市東灘区)の開館45周年を記念し、分館として2018年3月にオープンしました。香雪美術館は、朝日新聞社の創業者である村山龍平(1850~1933年)が収集した日本と東アジアの古い時代の美術品を所蔵している美術館です。

刀剣・武具、仏教美術、書跡、中近世絵画、茶道具など、多岐にわたる収集品を紹介し、あわせて、日本の文化財を守ろうとした村山龍平の想いを伝えています。中之島香雪美術館の茶室展示室である「中之島玄庵」は、旧村山家住宅(神戸・御影)に建つ国指定重要文化財の茶室「玄庵」を、原寸大で正確に再現してあります。

特別展「香のいろは―道具でたどる香文化」は、5月31日(日)まで予定。※現在、休館中。

大阪市北区中之島3-2-4 中之島フェスティバルタワー・ウエスト 4階。
https://www.kosetsu-museum.or.jp/nakanoshima/

展覧会図録は通信販売しています。希望者は下記へ連絡を。
株式会社Can(キャン) 078-599-8860(平日)

◇  ◇

「おうちでミュージアム」は、地域が誇る美術館・博物館の名品を自宅にいながら楽しんでもらおうと企画しました。各館の学芸員や担当者が“お気に入り”の作品や、近々、お目にかかれる作品を一つだけ選んでご紹介します。世の中が落ち着いたら、ぜひ足を運んで、実際に五感で魅力を確かめてください。

あなたにおすすめの記事