かけがえのない青春の輝きに間近に出会えたPAC「卒業感謝音楽祭」 ファンの会が企画、佐渡芸術監督サプライズで客席に

【PACファンレポート⑨ PAC三年目の楽団員による卒業感謝音楽祭~ありがとうの気持ちを音楽にのせて~】

 

 「クラシックファンが創るコンサートの会」が主催した、今年8月にPAC(兵庫芸術文化センター管弦楽団)を卒団するメンバーらによる「卒業感謝音楽祭」は、青春の輝きがまぶしい、さわやかな感動を呼んだ演奏会だった。しめやかに小雨が降る4月6日の夜、サプライズで駆け付けた佐渡裕芸術監督の姿に、メンバーも聴衆も笑顔の輪が広がった。

  「第3回ファンが創るコンサート PAC応援シリーズvol.1」と銘打った演奏会の会場は神戸女学院小ホール。こぢんまりとしたステージを半円形に囲んで見下ろす客席からは、演奏者が驚くほど近く、演奏中の息づかいや曲を始める前のアイコンタクトもしっかり見える。定期演奏会時の黒の衣装から、エレガントなロングドレスに着替えた女性演奏家たちは、それぞれがかぐわしい花のようだった。

当日配られたプログラム。中面に卒団するメンバーの一言が綴られてる

 前半は弦の小品4曲と金管十重奏。オープニングはC.P.E.バッハ「フルートとヴァイオリンのための小曲」。PAC1年目の中塚菜月(Vn)と大久保祐奈(Fl)が先輩たちの演奏会の開幕を厳かに告げた。

 2曲目は弦楽五重奏でドヴォルザーク「Nocturne」。小島愛子、竹下芳乃の2弦のヴァイオリンと、丸山緑(Vn)、有梨瑳理(Vc)、山村ザッカリー(Cb)の卒団メンバーが、郷愁を誘う静かな調べを奏でた。

 3曲目は卒団メンバーの青野亜紀乃(Va)、山村ザッカリー(Cb)に、1年目の知久翔(Fl)が加わった3人でシュルホフ「小協奏曲」。ダイナミックな曲の構成で、緩急と強弱のメリハリが効いた初めて聴く曲にぐいぐい引き込まれた。

 4曲目はコープランド「Quiet City」。題名の通り、静かな町の穏やかな生活のたたずまいを思わせる豊かな旋律。卒団メンバーの加藤健太(Vn)、丸山緑(Vn)、有梨瑳理(Vc)、西本俊介(Cb)の4人に、農頭奈緒(Vn)、吉村結実(EH)、浦田誠真(Tp)が息の合った演奏を聞かせた。

 6人の賛助メンバーが加わり、黒一色の衣装に身を包んだ金管十重奏は、クリス・ヘイゼル「3匹の猫」より「Mr.ジャムズ」「ブラックサム」「バーリッジ」のシャープな3曲。PACからは池田悠人と浦田誠真(Tp)、山内正博と浦田誠真(Tb)が、金管の華やかな音色をリズミカルに奏でた。

 

 後半はムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」からの抜粋をPACメンバーら18人で披露。編曲は、メンバーが「ザックくん」と呼ぶ日本/アメリカ出身の山村ザッカリーが手掛けた。小編成なのに、オーケストラの音がするのは編曲が見事だからだろうか。

 

 演奏後に卒団するメンバー8人が順に立ち上がって客席に挨拶した。異口同音に口にしたのは、PACで過ごした3年間が、いつも温かく応援してくれる“お客様”とかけがえのない仲間たちと出会えた幸せに満ちていたこと。“お客様”の中にはもちろん、このコンサートの進行を手弁当で支えた「クラシックファンが創るコンサートの会」の会員たちが筆頭で入ることだろう。

 

 アンコールは、7月の佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ「フィガロの結婚」(作曲:モーツァルト)から「もう飛ぶまいぞ、この蝶々」とホルスト「惑星」から「ジュピター」。プログラムの構成を含め、演奏会の粋な選曲と、“音楽浸け”の濃密な日々で成長してきたメンバーの音楽への姿勢と息の合った演奏に、これまでPACの定期演奏会の演奏が素晴らしいのは、一流のゲストトッププレーヤーたちにけん引・触発されてのことだろうと認識してきた自身を恥じた。(大田季子)

 

終演後のロビーで記念撮影。左から青野さん、小島さん、有梨さん、佐渡芸術監督、加藤さん、山村さん、丸山さん、西本さん、竹下さん

 

【楽器の略号の解説】Vn=ヴァイオリン、Fl=フルート、Vn=ヴィオラ、Vc=チェロ、Cb=コントラバス、EH=イングリッシュホルン、Tp=トランペット、Tb=トロンボーン

 

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