主人手作りの器で早春の味覚と獺祭を味わう
【舟櫓(ふなやぐら)】神戸市中央区

関西・オンナの美酒佳肴

 

主人手作りの器で早春の味覚と獺祭を味わう

【舟櫓(ふなやぐら)】神戸市中央区 

 

 生田神社と東門通りの間にある細い路地。小さな店がいくつも並んで穴場感たっぷりの抜け道に「舟櫓」がある。中に入るとカウンターに並ぶ惣菜が圧巻。季節の魚や野菜を使った和食を中心に鉢が並ぶ。ボードには日替りの料理が、これまたたくさん書かれ、しかも手の込んだ料理が多くてわくわくするのだ。

 

ずらりと並ぶ和食中心の惣菜
ずらりと並ぶ和食中心の惣菜

 

 日差しが春めいてきた頃、山口県からの来客と神戸の友人と四人で出かけた。乾杯は山口の地酒、獺祭スパークリング。独特の甘みと旨み、シュワシュワと弾ける口あたりがたまらない。アテは明石の昼網で入ったイカナゴの釘煮。イカナゴは、淡路から阪神間の沿岸部では春の前触れ的な魚として、各家庭で佃煮にされる。かくいう私も毎年のように作って親戚や知人に配っている。あげたりもらったりというのも習慣になっており、作る人によって異なる味を楽しむのだ。でもやっぱり料理人が作ったものは格別の味だ。

 

和風しゅうまいと岩津ネギと鶏手羽のくたくた煮
和風しゅうまいと岩津ネギと鶏手羽のくたくた煮

 

続いて同じく獺祭50。獺祭のシリーズの中でもほどよい甘みがあって、食中酒として私は気に入っている。料理は具だくさんの自家製和風しゅうまい。鶏ミンチ、エビ、キクラゲ、玉ネギ、ニンジン、筍、椎茸が入ったしゅうまいを、おろしポン酢で味わう。 岩津ネギと鶏手羽のくたくた煮は、こんがり焼いた手羽と岩津ネギを薄味のダシで煮たもの。甘味のある岩津ネギ、ほろほろとやわらかい手羽をダシと共にいただく。
 シメの酒は、灘の菊正宗が130年ぶりに出した新ブランド、百黙。そしてシメの料理は、あっさりと茶そば。ガッツリ食べたいときは、寿司職人だったご主人の握りやサバの棒寿司がおすすめだ。

 

30年の歴史がある店
30年の歴史がある店

 

 舟櫓がオープンしたのは約30年前、主に社用族が接待に利用する割烹料理店だったが、震災を経て、16年ほど前にリニューアル。サラリーマンや女性が気軽に利用しやすい、今の形態になった。これが、カジュアルに美味しいものが食べられる、と常連さんを喜ばせることになった。単身赴任者が晩ごはんを食べに来たり、女性同士が飲みに来たり、小上がりではグループで宴会もできる。おそがけに行って、お惣菜が品切れになってしまったときでも、大将や女将さんが軽いおつまみを作ってくれる、居心地のいい店なのだ。

 


◆ MENU
生ビール600円
地酒グラス800円〜
お通し500円
自家製和風しゅうまい600円
イワシのみぞれ煮850円
岩津ネギと鶏手羽のくたくた煮600円

◆ Data
舟櫓
電話:078-331-5517
住所:兵庫県神戸市中央区下山手通り1-3-12 ゼウスタウンビル1F
営業:17:00〜23:00(フード22:00 LO、ドリンク23:00 LO)
休み:日・祝


◆ Writing / 松田きこ
(株)ウエストプラン代表。兵庫県西宮市在住。食・観光・人物取材に日本中を飛び回る。ライター歴20年以上。編著書「神戸・阪神間 美味しい酒場」「くるり西宮・芦屋・東灘・灘」「くるり丹波・篠山」他
http://www.west-plan.com/

◆ Photographer / 篠原耕平