2017-18シーズン有終の美を飾ったロシア音楽の名曲~兵庫芸術文化センター管弦楽団第107回定期演奏会~

【PACファンレポート㉒第107回定期演奏会】

 6月23日の兵庫芸術文化センター管弦楽団(PAC)第107回定期演奏会は、日本人の感性に魂の深いところで共振するロシア音楽を取り上げ、今シーズン最後を飾る心温まる演奏会となった。

 

 指揮はPACの定期演奏会には5度目の登場となったブルガリア生まれのロッセン・ミラノフ。最初の曲、ニコライ・リムスキー=コルサコフ(1844-1908)の序曲「ロシアの復活祭」は、ロシア正教の聖歌を主題に取り入れた厳かな、しかし様々な楽器が入れ替わり立ち替わり主旋律を奏で、ドラマチックで華やかな印象を残す曲だ。重要な役割を担うのはハープ(エキストラ・プレイヤー篠原英子)の澄んだ響き。なんという奏法なのか、ポンポンと軽やかに天使の足音を思わせる音色が心地よく耳に残った。

 

 ソリストはイスラエル生まれのピアニスト、イノン・バルナタン。セルゲイ・ラフマニノフ(1873-1943)の「ピアノ協奏曲 第2番」を情感たっぷりに演奏した。流麗な調べとドラマチックな展開。客席で聞いている自分の輪郭がいつしかあやふやに溶け出してホールの時空を浮遊していくような気分になる。

 大変な技量を要求される曲を見事に演奏した後、アンコールで演奏したのは同じラフマニノフの「楽興の時第5番」。演奏家の仕事にも体力と気力はとても大事だなあと改めて感じ入った。

寺門孝之さん(画家・神戸芸術工科大学教授)が描く2018年6月のプログラムの表紙は「ひびきくん、みみをすます(その9)」。日曜日の明るい昼間の公園にどこからか聞こえてくる美しくきよらかな音は……

 オーケストラの曲は、イーゴリ・ストラヴィンスキー(1882-1971)のバレエ音楽「ペトルーシュカ」(1947年版)。ストラヴィンスキーといえば、2005年11月の芸術文化センターの開館記念の公演で、平山素子さんが踊ったニジンスキー振付初演版「春の祭典」復元上演をここで見たなあ……と懐かしさがこみ上げる。

 「ペトルーシュカ」もバレエ音楽だからパーカッションを駆使し、リズミカルで華やかだ。フルートの導入部、人形のコミカルな動きがイメージされる。その後、哀しい結末に向けて物語が進行していく。

 ソリストがピアニストの時、オーケストラの演奏で別の人がピアノを弾くのは、かなりプレッシャーを感じることなのではないだろうか。ピアノのエキストラ・プレイヤー佐竹裕介は、開演前に舞台上で熱心に指を動かしていた(後で調べたら彼は1年前に大阪フィルの定期演奏会でも同じ曲を演奏していた)。

 2017-18シーズンの最後の演奏会のアンコール曲は、チャイコフスキー「白鳥の湖」より“ワルツ”。軽やかにステップを踏みながら、飛翔していくPACメンバーを応援するような選曲だった。

開演前のアナウンスでも案内があった通り、演奏会終了後、PACメンバーたちはロビーで聴衆を見送った
聴衆とPACコアメンバーたちが互いに「ありがとう」の言葉を交わし合う和やかな時間だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コンサートマスターは四方恭子。ゲスト・トップ・プレイヤーは、ヴァイオリンの横山俊朗(NHK交響楽団次席)、PACのOBでヴィオラの増永雄記(日本センチュリー交響楽団副首席)、チェロのマーティン・スタンツェライト(広島交響楽団首席)、コントラバスの石川滋(読売日本交響楽団ソロ・コントラバス奏者)、フルートの松本竜士(オーケストラ・ジャパン奏者、元関西フィルハーモニー管弦楽団特別契約奏者)、トランペットの佐藤友紀(東京交響楽団首席)、ティンパニの奥村隆雄(元京都市交響楽団首席)。スペシャル・プレイヤーは、PACのミュージック・アドヴァイザーも務めるヴァイオリンの水島愛子(元バイエルン放送交響楽団奏者)とトロンボーンのロイド・タカモト(大阪フィルハーモニー交響楽団奏者)。PACのOB・OGは、ヴァイオリン8人、ヴィオラは増永含み2人、チェロ、コントラバス、ホルンで各1人が参加した。(大田季子)




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