気鋭の指揮者カーチュン・ウォンの巧みなリードでミュンヘン国際の若き覇者、チェリストの佐藤晴真とPACが熱演

【PACファンレポート㊻兵庫芸術文化センター管弦楽団 特別演奏会 ドヴォルザーク&幻想交響曲】

3月20日(土・祝)の特別演奏会は、出演を予定していた指揮者の準・メルクル、チェリストのカミーユ・トマが新型コロナウイルスの影響で来日できなくなったため、指揮は2月の特別演奏会に続いてカーチュン・ウォン(私は2019年11月の第119回定期演奏会以来2度目)、ソリストは2019年ミュンヘン国際音楽コンクール・チェロ部門で日本人として初めて優勝した佐藤晴真が初登場した。2月の特別演奏会「ザ・ブラームス」のチケットが入手できなくて残念な思いをしただけに、とても楽しみにして出掛けた。

休憩中にロビーの画面で撮影したオーケストラの配置

ホールに入って最初に気づいたのが、オーケストラの楽器の配置がいつもと違うこと(以前の定期もそうだったのかも)。舞台に向かって左(つまり上手)にコントラバス6台が並び、その横はチェロ、右はハープが2台、その前はヴィオラ、第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが前列左右に分かれている。楽器の配置は、指揮者によって(あるいは演奏する曲によっても、なのだろうか)変わることがあるようだが、今日はどんな音が聴けるだろうと、ワクワクして開始を待った。

 

ドヴォルザークの「チェロ協奏曲」は、数あるチェロ協奏曲の中でも王様のような存在と、プログラムにある。2020年度の齋藤秀雄メモリアル基金賞、出光音楽賞を受賞して現在、将来が最も期待されている新進チェリスト、佐藤晴真は、第1楽章から存在感のある重厚な音を堂々と奏でて見事。クラリネットとの愛のデュエットが響く第2楽章は切なさがほとばしり、夢見るような美しさへと誘う。東欧のニュアンスをまといつつドラマチックに展開する第3楽章、佐藤はエネルギッシュに、しかも情感豊かにメロディーを紡ぎだしていく。指揮者のウォンは、清々しいまでの緊張感をもって演奏するソリストとPACの掛け合いを「そう、それでいい」と鼓舞するように巧みにリードした。

佐藤のアンコール曲はJ.S.バッハ「無伴奏チェロ組曲第1番」より サラバンド。約40分に及んだ演奏の疲れも見せず、宗次コレクションから貸与されているE.ロッカ1903年の深い音色を堪能した。

 

この日の演奏会のプログラム

オーケストラの曲はベルリオーズ「幻想交響曲」。恋物語を下敷きに作曲された大曲で、聴くたびに新たな気づきと驚きを与えてくれるスリリングな曲だ。直近で聴いたのは2019年1月の佐渡芸術監督が指揮した第111回定期演奏会、このホールで(あの時は、パリから来日したシルバ・オクテットがゲストのしゃれた演奏会だった)。27歳のベルリオーズが作曲したのは約200年前の1830年、もし私が当時の聴衆だったら「こんな音楽、ありなの!?」と度肝を抜かれたに違いない。それぞれに趣のある5つの楽章の随所に、予定調和を打ち破る斬新な仕掛けがあり、スリリング。多彩な楽器を駆使したオーケストレーションを、手足の長いウォンは、時には膝を折って身をかがめ、時には空中バタフライをしているかのように身を乗り出して、情熱的にリード。大いに楽しめた。

これだけの熱演だったから、オーケストラのアンコールは期待していなかったが、何度も拍手で呼び戻されたウォンは、PACと名残を惜しむかのようにリムスキー=コルサコフ「熊蜂の飛行」をアンコール演奏した。次回、彼がPACを指揮することがあれば、必ず来たいと思わせる魅力があった。

 

ゲスト・コンサートマスターは小野明子(メニューイン音楽院、ギルドホール音楽院教授)、ゲスト・トップ・プレイヤーは、ヴァイオリンの大森潤子(元札幌交響楽団首席)、ヴィオラの中島悦子(関西フィルハーモニー管弦楽団特別契約首席、神戸市室内管弦楽団奏者)、チェロの植木昭雄(フリーランス、第1回齋藤秀雄メモリアル基金賞受賞)、コントラバスの加藤正幸(元東京フィルハーモニー交響楽団副首席)。スペシャル・プレイヤーはPACのミュージック・アドヴァイザーも務めるヴァイオリンの水島愛子(元バイエルン放送交響楽団奏者)、バスーンの中野陽一朗(京都市交響楽団首席)、ホルンの五十畑勉(東京都交響楽団奏者)、ティンパニの近藤高顯(元新日本フィルハーモニー交響楽団首席)、パーカッション坂上弘志(元大阪フィルハーモニー交響楽団首席)。PACのOB・OGはヴァイオリン6人、ヴィオラとコントラバスが各2人、チェロとクラリネット、トランペット、ティンパニが各1人参加した。(大田季子)

 




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