九州・宮崎の街で郷土料理三種を味わう

関西・オンナの美酒佳肴

 【和膳旬菜 つちや】宮崎市 

宮崎の中心部、西橘通りを中心とするエリアは、昭和の風情が漂う繁華街。日が暮れても街全体が明るいのは、飲み屋の看板だけでなく、街灯の多さによるものようだ。街を散策すると、あちらこちらから炭火のよい香りが漂ってきて、ぜひとも名物の地鶏を食べたい、と思わずにはいられなかった。

続く時は続くもので、今年2度目の宮崎への旅。夜ごはんは地元の人が集まる店に行こうと、空港から乗ったタクシーの運転手さんにイチオシの店を教わっていた。街の雰囲気を確かめたくて、ぐるっと繁華街を見て歩いたあとに、教わった店「つちや」の前に立った私。外から見ても、なんとなくいい感じで、これはアタリに違いない、と中に入った。

カウンター横にずらりと並んだ焼酎のボトルは、さすが焼酎の本場らしく見慣れないものばかり。案内された個室でメニューを見ると、料理の種類の多さがうれしくてなかなか決められない。が、まずは先ほどから食べたいと思い続けていた炭火焼きからと「地頭鶏もも焼」をオーダー。ドリンクは飲んだことのない焼酎、日南の芋焼酎「献上銀滴」を炭酸割りで。かむごとにしっかりした旨みがあふれる鶏肉を、献上銀満のすっきりした味がすっと喉の奥に流していく。

「イチジクの揚げ出汁」は、温かくてソフトな甘味がおなかにしみた。甘酸っぱくてジューシィな「チキン南蛮」はタマゴの存在がはっきりわかる自家製タルタルソースで。どれも文句なしに美味しくて、なんだかんだと食べておなかはふくれてきたのだけど、どうしても本場の冷や汁を食べてみたかった。

温かいご飯と共に出てきた「冷や汁」には、キューり、ミョウガ、シソ、豆腐がたっぷり入っている。ご飯にかけて食べると、関西で食べた味とは全然違った。あ~やっぱり本場の味には敵わないのだ。冷や汁は、元々は農家のお昼ごはんだったそうだが、ご主人に作り方を聞くと、「イリコとゴマをすり鉢であたって、味噌をはりつけて軽く炙ります。そこに水を入れてすり鉢ごと冷やします」と、ずいぶん手間がかかっていてびっくり。たしかに焼いた味噌が香ばしくて、出汁の旨みがきいていた。

宮崎はスナックの街だそうで、人口あたりのスナックの数が日本1だとか。もう少しお酒は飲みたいけれどスナックで歌う気分でもなかったので、なんとなく歩いていると、「ピアノの生演奏、リクエスト受け付け」と書かれた看板に目がとまった。開いたドアから漂う上質な気配にも惹かれて中に入ると、カウンターの向こうにグランドピアノ。奥にはテーブル席もある。二人の女性スタッフが迎えてくれて、カウンターへ。音楽好きの大ママが店を始めて40年以上という「ピアノラウンジ バラード」。大ママはこの日はいなかったけれど、ハイボールを飲みながら、ピアニストのマリさんと女子トークをし、王道のカノンとノクターンをリクエスト。生演奏を聴いてしっとりいい気分で宿に戻った。

翌日は高千穂あまてらす鉄道に乗って、美しい渓谷の自然美に癒やされ、帰りは10月に就航したばかりのフェリー「ろっこう」で神戸港まで。船内でも宮崎料理を食べて焼酎を飲み、個室でぐっすり眠った。駆け足の宮崎だったけれど、デジタルデトックスですっきりし、食べ物の美味しさと出会った人々とおしゃべりした、あたたかい時間が心に残った。

 



◆ MENU(税込)

地頭鶏もも焼1,950円
チキン南蛮770円
冷や汁800円
献上銀滴 1合660円、グラス440円


◆ Data

和膳旬菜 つちや
電話:0985-25-3031
住所:宮崎県宮崎市高松町2-30 第二杏国ビル1F
営業時間:17:30〜23:00(LOフード22:00/ドリンク22:30)
定休日:月曜

◆ Writing / 松田きこ(ウエストプラン)
http://www.west-plan.com/

 

※新型コロナウイルスの感染拡大防止のため対策した上で取材・撮影しています。
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