ドリンクの充実ぶりに驚かされる西宮北口の焼鳥屋さん
【焼鳥こにし】兵庫県西宮市

関西・オンナの美酒佳肴

 

ドリンクの充実ぶりに驚かされる西宮北口の焼鳥屋さん

【焼鳥こにし】兵庫県西宮市 

 

 阪急・西宮北口駅の西口から、飲食店が並ぶ細い路地を入ったビルの3階にある焼鳥こにしは、焼鳥屋だけどまるでバーのよう。ウイスキー棚にボトルがたくさん並び、主人の小西哲司さんの作務衣の胸にはソムリエバッジが光る。その他の3つのバッジは、利き酒師、テキーラマエストロ、ウイスキーエキスパートの有資格を表している。酒好きにとって、これは頼もしい! なにより料理に合わせたドリンクを安心して任せられる。

 

小西さん
小西さんの手には、指揮者・佐渡裕さんが来店時にサインをしてくれたボトル

 

 初めて来た日に「ウンダーベルグが焼鳥屋にある!」と驚いた。オーセンティックバーでしか見かけない薬草酒があって、しかも棚に並ぶウイスキーの数が半端ではない。スコッチだけで500本。「そんなに必要ですか?」という意地悪な質問に、「同じ蒸留所でも醸造年度や状態によって熟成度が違うから、お客様のリクエストに応えるためにも」と小西さん。バーテンダーだったこともあり、数々の資格を取ったのも「お客様に自分の言葉でお酒のことを説明したいから」だそう。

 カウンターにあるホワイトオークの樽には、サントリー角、NIKKAを入れて保存している。「樽の木の成分がウイスキーをより美味しくするから」と。それを聞いたら、やっぱりハイボールにしよう。美味しいハイボールを作るポイントは温度だとどこかで聞いたのでたずねてみると、「冷たすぎてもダメなので、グラスを持つ指で温度を確かめながらステアしています」と、マドラーを置いてグラスを差し出してくれた。ひんやりしたハイボールが喉を潤す。「もう、美味しい」としか言いようがない……。

 

鶏もも肉とレバーのパテ、ウシュクベ、ウンダーベルグ
鶏もも肉とレバーのパテ、ウシュクベ、ウンダーベルグ

 

 鶏はすべて淡路の朝引き。肉の旨みがありながら、くどくない、強く自己主張しない鶏を選んでいるのだ。塩はミネラルが豊富で鶏の甘みを引き出す天下一。タレは和三盆や熟成みりんで上品な甘みをのせた自家製。このどちらかでいただく。
 必ず食べたいのが、鶏もも肉とレバーのパテ。鶏の肝ともも肉に玉ネギを加えて炒め、白ワインと塩で煮込んだシンプルな味だ。岩塩をふりかけ、黒オリーブとアンチョビーのタップナードソースを添える。オリーブとアンチョビーだけのシンプルな味が、あっさりしたパテによく合う。これがまた、日本酒にもワインにも合うのだ。

 2杯目のハイボールはウシュクベ。500年以上前のスコットランド。当時のウイスキーは古代ゲール語で「命の水」という意味のウシュクベーハと呼ばれていた。これが英語になってウイスキーの語源となったそう。「命の水」って、いいなぁ。人によっては、日本酒やビールも「命の水」かもしれない。バックラベルには、スコットランドの詩人ロバート・バーンズが描かれている。「蛍の光」を作った人だ。そんなこんなの雑学も、ほろ酔い加減の話題にはちょうどいい。

 

箕面ビール
人気の箕面ビールは限定ビールもそろう

 

 夏に来たとき、箕面ビールの「桃ヴァイツェン」があって、小躍りしたくなるほど喜んで飲んだ。春先は、「ゆずホ和イト」。オレンジピールの代わりに箕面産の柚子を使ったホワイトビールだ。人気の季節限定ビールだけに、なかなか飲食店では出会えない。爽やかな香りと独特の味わいがたまらない。

 「造り手の思いや物語を聞くのが好き」と、製造元や異なるジャンルのシェフのもとに足を運んで情報交換をする小西さん。その姿勢が伝わって、「なんか居心地がいいんです」と最初に私を連れてきてくれた酒好きライターのK子さん。「行くときは私も呼んでくださいね」という言葉を無視して一人飲みしてしまった。ワインも日本酒も、そしてカクテルも、なんでも来いの焼鳥屋さん、ライター仲間のおすすめはやっぱり外せない。

 


◆ MENU
ハイボール670円~
箕面ビール(定番)850円
     (限定)1,000円
鶏もも肉とレバーのパテ670円
焼鳥串155円~

◆ Data
焼鳥こにし
電話:0798-65-5519
住所:兵庫県西宮市甲風園1-6-4 エステートイザワビル3F
営業:17:30~24:00
休み:水曜


◆ Writing / 松田きこ
(株)ウエストプラン代表。兵庫県西宮市在住。食・観光・人物取材に日本中を飛び回る。ライター歴20年以上。編著書「神戸・阪神間 美味しい酒場」「くるり西宮・芦屋・東灘・灘」「くるり丹波・篠山」他
http://www.west-plan.com/