この美しさは眼福もの! 東洋陶磁美術館の特別展「フランス宮廷の磁器 セーヴル、創造の300年」7/16まで開催中

 大阪・中之島の大阪市立東洋陶磁美術館で開催中の特別展「フランス宮廷の磁器 セーヴル、創造の300年」は、展覧会ポスターでひときわ存在感を放つ優美なポプリ壺「エベール」(1757年)から想像していた以上に多彩でダイナミックな美の宝庫だ。

 18世紀から今日まで300年の歴史を物語る、セーヴル陶磁都市の所蔵作品約130件を展示。作り手たちと発注者、異なる視座から美しさを追求するベクトルが交差する点に生れ落ちる作品群の一つひとつに物語が感じられ、見ていて飽きない。

 フランスの国立セーヴル磁器製作所は、ヨーロッパで強大な権力を誇ったルイ15世時代の1740年に設立されて以来、現在までヨーロッパ磁器最高峰の一つに数えられている。パリ東端のヴァンセンヌにあった軟質磁器工房に始まる製作所は、パリとヴェルサイユの間に位置するセーヴルへと移転後、王立の磁器製作所となり1769年に硬質磁器の開発に成功した。宮廷画家や彫刻家が招かれて知的で洗練された作品を生み出し、国王や貴族に納めたほか、外交上の贈り物としてロシア皇帝エカテリーナ2世などへも献上されたという。

 

 最初の展示室「プロローグ/王のための磁器」に入ると、右手にすぐ神々しいほどクリアな発色のブルーが目を引く大皿がある。ルイ15世の「ブルー・セレストのセルヴィス」からの1点という。柔らかな光をまとう一対の乳白色の胸像は、ルイ16世と王妃マリー・アントワネット。まさに「ベルサイユのばら」の世界だ。

大皿(ルイ15世の「ブルー・セレストのセルヴィス」より)1754-1755年 軟質磁器
「ルイ16世/王の胸像」(左)と「マリー・アントワネット/王妃の胸像」いずれもルイ=シモン・ポワゾ(1743-1809)に基づく 1777年 硬質磁器

 「第1章/18世紀のセーヴル」の展示で目を引いた作品の一つが「透かし彫りのかご」。かご細工に見立てた高さ20cmに満たない軟質磁器の果物かごに、極めて高度な技術が詰め込まれている。

透かし彫りのかご 1756-1757年 軟質磁器

 もう一つは一辺が15 cmの「角盆」。中央に庭仕事の道具が描かれている盆の周囲の細工の密なこと! 気の遠くなるような作業を重ねて出来上がった逸品だ。

角盆 1766年 軟質磁器

 そして高さ30 cmあまりの壺「コテ・デュ・ロワ」。紫と金、高貴な色に彩られたゴージャスなデザインは裕福な貴族の城館のマントルピースを飾る3点セットの置物の中央に置かれたものという。

壺「コテ・デュ・ロワ」 1776年 軟式磁器

 「第2章/19世紀のセーヴル」では、フランス革命の混乱を経てナポレオンが台頭した時代に作られた新古典主義の作品が並ぶ。絶妙なバランスの造形と繊細な装飾で魅了した水差「ブロア」(1887年)の器形は、彫刻家ロダンの師、アルベール=エルネスト・カリエ=ベルーズの手になるもの。女性らしさが匂い立つ装飾はシュザンヌ=エステル・アポワルという女性が担当した作品だ。19世紀半ばからの万国博覧会の時代には大型作品も登場し、「第3章/20世紀のセーヴル」の時代に向かう。

水差「ブロア」 1887年 硬質磁器

 

 19世紀末に流行したスカーフダンスを踊る女性ダンサーのテーブルセンターピースは、風をはらむスカーフとドレスのひだをビスキュイ(素焼き)で巧みに表現している。壁面には実際にスカーフダンスを踊る姿がレトロなフィルムで映し出されて興味深い。

 

 20世紀初頭にはセーヴル製作所で初めての外国人協力芸術家として、福井生まれの東京美術学校教授・沼田一雅(1873―1954)が型の製作に携わった。その後、現代まで芸術家とのコラボレーションは続き、伝統的なテーブルウェアの製作にとどまらない革新的な造形美への挑戦が現代も精力的に行われている。

 

 

 

象とねずみ 沼田一雅 1906年 硬質磁器
イタリア人の建築家・デザイナーのエットレ・ソットサス(1917-2007)が製作したテーブルセンターピース(1994年)はテーブル上の建築群を思わせる

【開催概要】

会期:2018年7月16日(月・祝)まで

開館時間:9時30分~17時(入館は16時30分まで)

休館日:月曜休館(4/30と7/16は開館)

観覧料※:一般1,200円、高校生・大学生700円、中学生以下無料 ※同時開催の平常展を含む

主催:大阪市立東洋陶磁美術館、朝日新聞社

企画:セーヴル陶磁都市、協賛:大日本印刷、協力:日本航空、日本通運

後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本

 

 

 

【レクチャー】学芸員による展示解説

2018年4月28日(土)、5月19日(土)、6月9日(土)・24日(日)、7月14日(土)

◎各日とも14時~14時30分、地下講堂で。当日先着順に70人。

【同時開催】[平常展]安宅コレクション中国陶磁、安宅コレクション・李秉昌コレクション韓国陶磁、沖正一郎コレクション鼻煙壺

 

 

 

 

【問い合わせ】大阪市立東洋陶磁美術館 TEL.06・6223・0055  FAX.06・6223・0057

大阪市立東洋陶磁美術館の公式ホームページはコチラ http://www.moco.or.jp/en/




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