在日外国人たちの魂の叫び「ワタシタチハニンゲンダ!」5/28(土)関西で公開~高賛侑監督インタビュー

ウィシュマ・サンダマリさん(享年33)の葬儀。映画の中では入管に収容されていた彼女を支援していた人がウィシュマさんの人となりを語る

朝鮮学校に焦点を当てたドキュメンタリー映画「アイたちの学校」(2019年)でキネマ旬報ベスト・テン(文化映画)選出、日本映画復興奨励賞を受賞した大阪在住の高賛侑(コウ・チャニュウ)監督の最新作「ワタシタチハニンゲンダ!」が5月28日(土)から関西で公開される。

昨年3月、スリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんが入管の収容施設で死亡した事件をきっかけに大きな世論が巻き起こり、閣議決定されていた入管法改正が見送られた。そして今、ウクライナからの避難民の受け入れが始まり、従来から日本で暮らしている外国人たちとの待遇の差が可視化されようとしている。

「この映画は、今こそ多くの人に見てもらわなければならない映画だと思っています」と話す高監督に、その理由と映画に込めた思いを聞いた。

高賛侑監督=5月18日、大阪市内で

【高賛侑監督インタビュー】

私は在日朝鮮人2世で、高校までは日本の学校に通っていました。朝鮮大学で自身のアイデンティティーに向き合い、民族差別を受けてきた自らの経験と在日の歴史を知る中で、このような差別をなくすために生涯を捧げたいと考えるようになり、活動しています。

法や制度が定める日本の外国人差別

前作の「アイたちの学校」でインターナショナルスクールを取り上げられなかったことが心残りで、2020年秋頃から外国人差別をテーマとする作品を作りたいと思い始めました。

というのは以前、日本における民族差別について2方向から調べたことがあったからです。

一つは他の国でコリアンたちはどのような状況なのか。

もう一つは日本にいる他の外国人たちの状況はどうなのか。

他国でのコリアンの状況は、中国の朝鮮族、旧ソ連の高麗人、アメリカの在米コリアンを取材しました。どの国でも肌の色や文化の違いなどを理由に、偏見や差別の対象になることは少なからずありましたが、大きく違っていたのは、日本では国が定めた法律や制度によって公的に差別が行われているということでした。

朝鮮初級学校

日本にいる他の外国人たちの状況を調べるために、神戸のインターナショナルスクールをはじめ、各地の外国人学校を取材しました。異国で暮らす外国人が、自分たちのルーツを大切にするための教育を受けられるかは、とても重要なことだと考えたからです。

日本にある外国人学校は、朝鮮学校と同じ各種学校に位置付けられ、国からの財政支援がないほか、当時は児童生徒は公的なスポーツ大会に出場できず、JRの学割がなく、高校課程を修了しても国立大学などを受験できませんでした。その後、世論の批判が高まって多少改善された部分もありますが、根本的な差別は現在も変わっていません。

法律で差別を固定化している日本の状況は「ひどい」差別という段階ではなく、世界的に見ても「異常な」差別といえるのではないかと思いました。

2021年の出入国管理法改正に反対するデモが大阪市内でも行われた

それで、次は外国人差別をテーマとする映画を作りたいという思いが込み上げてきたのですが、2年前は人々の関心が低く、たとえ制作したとしても多くの人に見てもらうことができないのではないかという状況でした。

しかし今は、ウィシュマさんの事件やウクライナからの避難民受け入れなどで、在日外国人への関心が高まっています。諸外国の中でも難民認定率が極端に低い日本にいる外国人たちが置かれている状況に心を痛めている人たちに、この映画を見てもらって、日本の差別的な現状がどんな歴史的経緯の中で生まれたのかを知り、それを解消する手立てを一緒に考えてもらいたいのです。

仮放免の人の貴重な証言や虐待の生々しい実態も映画に

制作過程では、在日韓国・朝鮮人、オーバーステイの外国人や技能実習生などへの取材だけでなく、長年難民支援活動を行ってきた社会活動センター「シナピス」の協力を得て、難民申請をして仮放免になった7人の在日外国人もインタビューすることができました。仮放免の人たちは働くことができません。その中の一人は今年2月、妻や弁護士にも知らせないまま強制送還されました。

映画には入管職員に囲まれて暴行を受ける外国人の生々しい映像も

私は自分でカメラを回して撮影していますが、想像を絶するような証言を撮りながら、事態は「異常な」差別の段階を超え、「恐るべき」差別であると強烈な衝撃を受けました。現代の日本で行われているとは信じがたい虐待の実態に触れ、「必ずこの事実を伝えなければならない」と決心しました。

入手不可能だと思っていた虐待の生々しい映像も、支援団体や弁護士たちを通じて入手することができました。中にはすでにユーチューブに公開されたものもありましたが、ベッドから落ちて、のたうち回りながら息絶えた人の映像は、部屋に設置された監視カメラに映っていたもので、未公開でした。

映画でこれらの映像を目にした人は、どれほどショックを受けるでしょうか。

入管の収容施設にいる人たちに敷地の外から支援の声を届ける活動をする団体も

けれども、これが、入管の収容施設の中で進行している現実なのです。暴言・暴行を受け、病気になっても放置される。命が危険な地へ強制送還される。心身ともに傷つけられた人々がハンストや自殺未遂を繰り返し、毎年のように死者が出る……。

タイトルの「ワタシタチハニンゲンダ!」は、取材に応じてくれた外国人たちの魂の叫びです。ナレーションはフリーアナウンサーの水野晶子さんが引き受けてくださいました。また、間違った点がないか、仮編集の映像を事前にチェックいただいたところ、数人の方から「歴史に残る作品だ」という評価をいただきました。これまでほとんど描かれることのなかった闇に照明を当て、可能な限りリアリティーを追い求めたからだと思っています。

ぜひたくさんの人に見ていただいて、在日外国人の置かれた現状を周りの人たちにも伝えていただければと思います。

 

【公開情報】5月28日(金)から大阪・第七芸術劇場、6月3日(金)から京都シネマ、6月18日(土)から名古屋・シネマスコーレで公開。

 

「ワタシタチハニンゲンダ!」公式ホームページ https://kochanyu-movie.shop-pro.jp/

 




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