【précieux 京都】#13 観葉植物のあらゆる“常識”をくつがえし、枯らさずに育て続けることを提案し続ける
コトハ プランツ&アンティークス=京都市中京区西ノ京職司町67-38

precieux京都

 いま、関西の観葉植物を取り巻く環境が少しずつ変わり始めている。

 その立役者とされているのが二条城の南西すぐにある「コトハ プランツ&アンティークス(以下、コトハ)」の代表取締役・谷奥俊男さんだ。開店は5年前。それまでは50余年続く花屋の次男として家業を手伝っていた。母の日が終わったころから晩夏まで、切り花は極端に売れなくなる。暑さで花がもたないからだ。その代わりに扱われるのが観葉植物。秋になると花々が充実してきて邪魔になり、セールで売り切られ、冬には店頭から姿を消す。「晩秋から冬は観葉植物の生産は無い」と思い込んでいる人が圧倒的に多かった。その事実を、いつも残念に思っていたが、理由はわかっていた。物流のシステムが確立されていなかったのだ。部屋や店に観葉植物があるだけで心が和む。誰もやらないのなら、自分がやってみよう。相談した全員が「成功するはずがない」と反対したけれど…。

コトハ プランツ&アンティーク外観
御池通りに立つ看板。数十メートル奥に入り右手にある倉庫風建物の二階。台所用品の「ラダー」、人気のコーヒー焙煎所&カフェ「クランプコーヒーサラサ」の前を通って階段を上がる

店内の様子
店内は、まるでジャングルのようだ。ニーズやライフスタイルに合うだけではなく、自分で育て続ける観葉植物をさがすことができる。コーヒーと本を持ち込んで、ずっと居たいほど、心地よい空間。谷奥さんの後ろで天井から枝がつりさげられているのが、いま一番人気のエバーグリーン。東京で買うより、交通費をつかってもココのほうが手頃だという理由で関東方面からわざわざかけつける人も

 自然の中で育った観葉植物の多くは沖縄と鹿児島の指宿(いぶすき)で常時、生産されている。40フィートコンテナに600鉢を乗せて運ばないと採算が合わないから、東京ほど需要が高くない関西の花市場には入ってこなかったのだ。定期的に仕入れるシステムをつくらなければ。そのために、まずは季節を問わず数種が揃う専門店を開くことにした。広さと天井の高さ、日当たり、風通しが必要だったが、物件がみつからない。ふと、高校時代のラグビー部の先輩が経営するペットショップの倉庫を思い出した。山積みにされていたペットフードを前に「あんまり使っていない」と言っていたはず。相談すると「まっ、テスト的にやってみろ。1年くらいは頑張れよ」と言ってくれた。次に沖縄と鹿児島の生産者を訪ねてまわった。観葉植物が好きで家業を継ぎたいが、需要が伸びないと廃業もあり得る、という生産者の30・40代の二代目たちと、夢を語り合った。「売るから、希少品種の質の高いものを作ってもらえないか」「もちろんです」「定期的に通うから東京に流れる前に、うちにまわしてくれたら有難い」「わかりました」。手ごたえを感じた谷奥さんは花市場にも「責任をもってうちが引き受けるから、定期便を作って欲しい」と交渉した。同業者のもとにも足を運び、観葉植物を一年中、置く意義を説いてまわった。

谷奥さん
「観葉植物は生き物を買うつもりで、とお願いしています。今はグリーンブーム。10年後、20年後も、人の生活の一部となれるかどうか、いろいろとチャレンジしていきます」と谷奥さん。今も沖縄や鹿児島の生産者のもとに、定期的に通っている

 谷奥さんがこだわったのは「枝ぶり」。人は森の木々に癒やされる。自然の森を感じさせてくれるような大きなうねりを持つ大鉢はコンテナに入れることができる数が極端に少なくなり、運送費が価格に反映される。しかし、ニーズはそこにある、と睨んだ。それが大当たり。SNSなどで、存在が知られて遠方からも足を運んでくれるファンが増え、噂を聞きつけた有名セレクトショップ「ザ・コンランショップ」新宿本店・京都店や「伊勢丹新宿店」からのオファーでコーナーができるほどになった。
 一方で、オープン3年目くらいから気になり始めたことがあった。購入者の8割が2年以内に枯らしてしまう。育てることに再挑戦するのは、その1割にも満たない。最初は魅力にとりつかれて通ってきてくれた人が「むずかしい」と止めてしまうのだ。「生産者や販売者は、枯れたら、また買ってもらうほうがいいと考える。そうではなく、枯れないから2個目が欲しくなる。発想の転換を提唱しました」と谷奥さん。
 力を入れたのは枯らさないで育てるための情報発信。水をやるタイミングや量、光や風との関係など、購入者に念入りに伝え、時にはSNSを通して質問に答える。写真入りで「この子、枯れてるんでしょうか?」という質問に「枯れていないようです。観葉植物はいつもグリーンの葉っぱが保てるとは限りません。15℃以上だと保てますが、8℃以下だと葉っぱが黄色くなって枯れたようにみえます。でも、春になれば芽吹きますよ」「わかりました!楽しみです。助かりました。ありがとう」というようなやり取りが続く。

 開店5年目にはコンテナで運ばれる物量も店の鉢数も約5倍に増えた。「うちだけでは、限界があります。結局は、人と人とのつながり。生産者や販売店の仲間やスタッフ、そしてうちの観葉植物を安心して買ってくださり、楽しんで育てるファンを増やし続けたい」と谷奥さんは言う。

 

セラミックソイル
土の替わりに提案しているオリジナルの「セラミックソイル」。1000℃で焼き上げたセラミックは乾いたら白くなり、水やりのタイミングがわかる上に衛生的
パキラ
このパキラ。見た目は伸び放題に見えるアンバランスなフォルム。しかし、これは計算済み。たとえば美容室のシャンプー台に寝た瞬間に頭上にパキラの葉が覆いかぶさるようにあったら、和む人も多いことだろう
バルダリウム
インテリアとしてジワジワと人気がでてきている「バルダリウム」にも力を入れている。ガラスの中を特殊な保湿素材を使って多湿状態にして小さな森を創り出す。LEDライトを充てて、霧吹きするだけでOK

 

※Cotoha -Plants & Antiques-
京都市中京区西ノ京職司町67-38
TEL:075-802-9108 水曜定休
http://www.cotoha.me/

 


◆Writing / 澤 有紗
QOL文化総合研究所(京都市上京区)代表。
文化、医療・美容、旅や食などのライフスタイル、京都などをテーマに雑誌・企業媒体誌などの編集・執筆を行うほか、エッセイなどを寄稿。テレビ番組や出版のコーディネート、国内外の富裕層旅行客の京都、滋賀のアテンドも行う。2010年の上海万博日本館の京都ウィークにて「抗加齢と日本食」をテーマに食部門をプロデュースするなど、国内外での文化催事も手掛ける。
主催イベントとして、日本文化を考える「Feel ! 日本 -日本を感じよう -」と自分を見つめ直しQOLを高める「Feel! 自分‐ QOL Terakoya Movement – 」を定期開催。生まれ育った京都の文化や街並みの保存・継承、町おこしに注力している。
https://www.qol-777.com

 

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