門脇麦×井浦新『止められるか、俺たちを』10/20公開~映画界のレジェンド若松プロの青春を白石和彌監督が映画化~

 共演した井浦新が、過去の出演作を見て「ああ、ここにも若き“化け物”がいる」と感嘆した女優・門脇麦が主演する映画『止められるか、俺たちを』(白石和彌監督作品)が10月20日(土)から関西で公開される。

 

©若松プロダクション

 井浦が演じるのは、「映画を武器に世界と闘う」と公言し、世の中を震撼させる話題作や問題作を作り続けてきた若松孝二監督(1936-2012)だ。描かれる時代は1965年に独立プロダクションを設立した後、怒涛のように作品を発表していた69年3月から71年9月まで。若松プロの映画づくりの現場には、今を時めく多彩な才能が集う一方で、何者かになろうとして、なれないでもがく自分にいら立ち、人知れず時代の陰に埋もれていった若者たちの姿もあった。門脇麦が演じる吉積めぐみは後者の一人。新宿のフーテンから若松プロに入り、ピンク映画の助監督となった、おかっぱ頭の女の子だった。

 本作のメガホンを取った白石和彌監督も20代初めから若松監督の弟子だった。白石監督は『凶悪』(2013年)で第37回日本アカデミー賞優秀監督賞を受賞、『彼女がその名を知らない鳥たち』(2017年)、『孤狼の血』(2018年)など、今や日本映画界をリードする一人となっているが、「30歳になったら映画辞めて北海道に帰っているんだろうな」と思っていた時代もあったという。

シネ・リーブル梅田の巨大パネルの前でポーズを取る井浦新(左)と白石和彌監督(9月25日撮影)

 世の中を撃つ映画を量産していた黄金期の若松プロを描く映画を撮りたい――。白石監督のアイデアに、若松監督とゆかりのあったスタッフや俳優が賛同して出来上がったのが、本作だ。映画タイトル『止められるか、俺たちを』は、生前の若松監督が構想していた別の作品に付けていた題だという。白石監督は制作の動機を次のように明かす。

 「(若松)監督が交通事故で急逝したのは『千年の愉楽』(原作・中上健次)の公開前、76歳だった。突然亡くなって、僕らスタッフもキャストも若松さんとの作業がプツッと中途半端に終わった気持ちが残っていた。生誕80年で集まった時、初期の若松プロのレジェンドたち(足立正生、秋山道男、小水一男、高間賢治、福間健二など)の話を改めて聞いて無類に面白かった。吉積めぐみさんの話も聞いて、時代は違えど若松監督に弟子入りしたということでいえば彼女は僕と同じ立場。いわば僕の分身が、若松プロの凄まじいエネルギーの人たちの中で生きようとしていた。それを描くことは、自分自身の話に、青春映画になるんじゃないかと思った」

 

 白石監督が「新さんにお願いするしかなかったから、断られたらどうしようかと思った」と話す若松孝二役を、井浦はとても楽しそうに演じているが、クランクインするまでのプレッシャーはとても大きかったという。

 「撮影初日はパレスチナのシーン。『井浦新が何を持ってくるのか』って感じで、みんなに見られているのがわかった。僕はあこがれていた若松監督のいいなと思っていたところを全部やろうと思った。若松監督流に言えば、遊ぼうと。撮影の時、若松監督は役者によく『お前の心を見せろ』と言っていた。それってどういうことなのか。未だに問い続けている。『用意、スタート』から『セット』までの間は“神事”のようで、魂だけが勝手に動いているような感覚があった」

 撮影が終わるまで井浦は、若松監督の若かりし頃の言葉がちりばめられた台本にずっと目を通し続けていた。

 「本当に擦り切れるぐらい何度も何度も。ずっと触っていないと精神が安定しないぐらい。それで何かを得ようとしていたわけではないが、台本を見ることで、どこか安心できていたのかもしれない。若松監督の著書に『俺は手を汚す』というがあるが、監督の言葉の詰まった『止められるか、俺たちを』の台本と、かつて現場で若松監督から僕が聞いてきた言葉と、『俺は手を汚す』という言葉ってなんか全部ちゃんとつながっていた。若松監督がいかに若い頃から行動も発言もぶれていない人だったかということが、だんだんわかってきて。そういうのを感じよう、感じようとしていたのかもしれない」

 

©若松プロダクション

 めぐみ役を自身の監督作『サニー/32』に出演した門脇麦さんに決めた理由を、白石監督は「めぐみさんの存在を形にできるのは彼女しかいないと思った。門脇さんもめぐみさんと同じおかっぱ頭のイメージがあり、健康的な雰囲気と60年代のアンニュイな雰囲気を同時に持っている不思議な女優さん。視線の先を想像させるところもいい」と言う。

 井浦も「麦なら、やってのけちゃうんだろうなと思った。麦がその時代の女性として生きていたから、僕も若松監督として安心して背中を見せていくことができた」と話す。

 

 この映画は白石監督に「インディーズにいた僕が忘れかけていた、映画づくりがいかに自由だったかを思い出させてくれた」そうだ。「若松プロ出身者なんだから、僕はもっと攻める映画をつくらなきゃ。若松さんに言われて覚えている『自分を突き動かすのは、自分だ!』という言葉を、映画の中でもう一度言われた。腹が立つと同時にうれしい」

 もしも若松監督がこの映画を見たら?と尋ねると「きっと、もっとマシな映画を作れって言われるよな」。小さく笑った白石監督は、とても幸せそうだった。

 

【上映情報】10月20日(土)からシネ・リーブル梅田、第七芸術劇場、シネ・リーブル神戸、京都シネマで公開。




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