変わらぬ爽快感で 停滞ムードもどこ吹く風 劇団四季「マンマ・ミーア!」京都劇場で公演中

劇団四季ミュージカル『マンマ・ミーア!』が、9年ぶりに京都劇場に帰ってきた。迎えた1月27日の開幕日。「観る人すべてを幸せにするミュージカル」の触れ込みにふさわしく、コロナ禍の停滞感を吹き払うかのような爽快で幸福感たっぷりのステージに、客席が酔いしれた。

撮影:重松美佐

『マンマ・ミーア!』は、1970年代を席巻したスウェーデン出身のポップグループ・ABBAのヒットナンバー22曲で構成されたミュージカル。99年にロンドンで世界初演を迎えて以降、「ダンシング・クイーン」をはじめ、誰もが耳にしたことのある名曲で紡がれる舞台が評判となり、世界中の累計観客動員数は6500万人にも達する大ヒット作となった。2002年以降の劇団四季による日本公演も同様で、総公演回数は3100回超、総動員数約270万人を数える。カーテンコール時には客席まで一緒になって踊る現象が生まれるほどのエネルギーにあふれた作品だ。公演を重ねて、2012年4月以来、ふたたび京都に戻ってきた。

物語の舞台は、海と空の青さがまぶしいエーゲ海に浮かぶ小島。ここで小さなホテルを営むのは、シングルマザーとして娘・ソフィを育ててきたドナ。20歳のソフィは恋人スカイとの結婚式を控え、誰か分からない父親とバージンロードを歩くことを夢見ている。母の昔の日記を持ち出して読んだソフィは、サム、ビル、ハリーというドナのかつての恋人たち=父親候補をこっそり結婚式に招待。そして結婚式前日、ドナの若かりし頃のバンド仲間、ターニャとロージーに続いて3人の男がホテルに現れた。ソフィが招待状を出したかつての恋人が一度にやってきたのだ。ドナは仰天、ソフィは本当の父親が誰なのかを探り出そうとするも、なんと全員が「自分が父親だ」と名乗り上げる。大混乱に陥ったソフィをよそに、結婚式は刻一刻と迫るが……。

母親の昔の日記を持ち出すソフィ(中央)は、父親候補として3人の男性の名前を見つけるが…… 撮影:野田正明

1月27日初日のキャストは、ドナを岡村美南、ソフィを若奈まりえ、サムを阿久津陽一郎、ハリーを飯村和也、ビルを坂本剛が熱演。結婚式前夜の母と娘の絆を描いた心温まる物語と共に描かれるのは、ドナとソフィを取り巻く人々の多様で自由な生き方と人間模様。身近にいそうな一人ひとりが、悩み苦しみながらも前を向き、幸せの形を見つけ、互いに認め合う「等身大」のドラマだ。そこに重なり合うABBA珠玉の22曲すべてが、舞台上の人物の心境やシチュエーションにピタリとはまり、聞きなれた曲の響きは増幅する。

 

シングルマザーとして働き詰めで頑張ってきたドナ(中央)が「いつかお金持ちになってやる!」と「マネー、マネー、マネー」を力強く歌い上げる 撮影:野田正明

タイトルナンバーの「マンマ・ミーア!」は、イタリア語源の間投詞で「なんとまあ!」の意。過去に愛した3人と想定外に再会し、目を見開き驚きながら歌うも、かつて燃やした情熱が心の中で沸き起こっていくドナの表情が切なくも愛しい。「S・O・S」は、ドナとサムがすれ違った過去を振り返りつつも、再燃する気持ちをお互いうまく届けられないもどかしさを歌に込める。とりわけ、サムの女性顔負けのハイトーンボイスは、救いを求める心の叫びにも聴こえて、胸が締め付けられる。愛くるしいソフィと3人の“父親”が歌う「音楽をありがとう」の旋律の優しさは、思い返しただけで心が温まってくる。鑑賞後の情景すべてが曲と共に鮮やかによみがえってくる。

ステージと客席が一体となって踊る「ダンシング・クイーン」は公演最大のハイライトのひとつ 撮影:野田正明

極めつけはカーテンコールの「ダンシング・クイーン」。“さあさ ダンス 踊っちゃおう スウィング 楽しもうよ”の出だしに導かれ、観客が誰ともなく次々に立ち上がり、この舞台では恒例の、客席を巻き込んだディスコタイムが始まった。観客のマスク姿以外は、9年前の観劇時とまったく変わらない光景だ。“踊って 歌えば 人生は最高だよ”と続く、どこまでも前向きな歌詞とメロディーは、無意識のうちに自粛がデフォルトとなっていた心に、幸福感たっぷりに突き刺さる。「コロナの中にあっても、踊っていいんだ」という当たり前のことに気づいたとたん立ち上がり、9年前と同様、音楽に体をゆだねた。(伊藤真弘)

 

【公演情報】『マンマ・ミーア!』京都公演は、2021年5月23日(日)まで京都劇場(JR京都駅ビル内)で。料金はS席11,000円、A席8,800円、B席6,600円、C席3,300円(税込み)。※公演当日3歳以上有料(ひざ上観劇不可)。2歳以下入場不可。

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問い合わせはナビダイヤル 0570・008・110

 




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