今夏の佐渡オペラ、モーツァルト 歌劇「ドン・ジョヴァンニ」の魅力とは?

【佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ2023 モーツァルト 歌劇「ドン・ジョヴァンニ」記者会見レポート】兵庫県立芸術文化センターが毎年夏に公演している佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ。今夏の作品はモーツァルト 歌劇「ドン・ジョヴァンニ」。7月14日(金)~23日(日)にKOBELCO大ホールで8公演が予定されている。チケットは2月26日(日)一般発売。2月15日にセンターの神戸女学院小ホールで開かれた記者会見の様子を紹介しよう。

 

「モーツァルトの二面性がよく表れた作品」佐渡裕芸術監督

「開館20年の節目の年までにはモーツァルトの代表作である4大歌劇を取り上げたかった」と話し始めた佐渡芸術監督。過去には2007年「魔笛」、14年「コジ・ファン・トゥッテ」、17年「フィガロの結婚」とモーツァルトのオペラを上演してきたので、「ドン・ジョヴァンニ」は、目標に掲げてきた最後の作品という位置付けだ。

その魅力は「モーツァルトらしい二面性」にあるという。「悲劇と喜劇が混ざっている。冒頭から地獄や死を想起させるようなシーンがあるかと思えば、ドン・ジョヴァンニは間一髪のところから様々なコミカルな逃げ方をする。物語の展開の中に優雅で美しい旋律のアンサンブルやアリアが挟み込まれ、何重にもなった劇場空間でモーツァルトの世界観を堪能してほしい」

演出家のデヴィッド・ニース(元メトロポリタン歌劇場首席演出家)とのモーツァルト歌劇は3作目。「彼には非常に信頼を置いています。作品の本質をずらさない正統派の演出で、装置・衣装のロバート・パージオラとともに壮麗でエレガントな舞台を作り上げてくれました。今回もきっと素晴らしい舞台になるでしょう」

「葛藤を抱えた芯の強いドンナ・アンナを」高野百合絵

一昨年の「メリー・ウィドウ」で主演を務めた若手の注目歌手、高野百合絵(ソプラノ)は今回、ドンナ・アンナ役を務める。「2021年に主演を務めたことで、昨年は仕事の幅が広がりました。この舞台にまた呼んでいただけてうれしい」と第一声は喜びの声。

「出演が決まった21年10月以降、イタリアやオーストリアでこの作品の舞台を見て勉強しました、ドンナ・アンナは憧れの役です。箱入り娘ですが、人生を自分で切り開いていこうとする、芯がしっかりした強い女性。歌手によって様々な解釈があり、演じ方が変わる役だなと思いました。なぜドン・ジョヴァンニに惹(ひ)かれているのかは自分でもわかっていないし、惹かれている自分を認めたくない。そんな葛藤を抱えた女性でもあります。モーツァルトの美しい旋律で、そんな女性像を表現するのは難しいですが、皆さんと一緒に作り上げていきたい」

「カリスマ性が問われる役に武者震い」大西宇宙

佐渡オペラ初登場で主人公を演じる大西宇宙(たかおき)は、アメリカや日本で出演依頼が絶えないバリトン歌手。「出演が決まってワクワクしています。カリスマ性が問われる役なので挑戦でもあり、武者震いしています」と話し出した。

「この劇場のオーケストラ(兵庫芸術文化センター管弦楽団)に知人がおり、かねがね夏のオペラの熱気を聞いていました。ニューヨークでは、佐渡オペラに出演した歌手と共演する機会があり、『本当に素敵なカンパニーだった』と話すので、いつかは自分もと。ついに実現することがとてもうれしいです。実は高校生の頃、佐渡さんの楽屋にサインをもらいに行ったことがあって、そんな憧れのマエストロの隣に僕が座っているなんて信じられません」

自身が演じるドン・ジョヴァンニについては「彼が現代に生きていたら、どうなっているだろうと考えます。モーツァルト(1756-1791)は激動の時代を生きた人物で、この作品が生まれるころフランスではブルジョワジーが台頭し、革命が起ころうとしていた。価値観がひっくり返る時代を生きたことが、作品のテーマに根底としてあるのでは? 最後に一体だれが幸せになった? そう考えると、ドンやドンナという呼称が付いた人たちの立ち位置が見えてきます。この作品はモーツァルトの貴族社会への挑戦状だったかもしれません。演出のニースさんは読み込みの深い方だという印象があるので、その辺りも楽しみです」

劇場空間で味わえる人が作るオペラの醍醐味

佐渡芸術監督は「オペラはキャスティングや演出家選びから制作が始まっています。上演前の5、6月ごろから稽古が始まって、オーケストラが加わって作っていく。劇場にオーケストラがあって、様々なプロが集まって舞台を作っていく。2カ月余りの時間をともにして作るワクワク感とともに、我々は2005年10月の開館から19年目の今、様々な経験を積んできました。とはいえ、オペラは人が作るものですから、作ってみなければわからない面もあります。

僕自身は劇場空間が大好きです。2千人のお客さんが演者から発するエネルギーを受け止めて、それをまた舞台に返してくれる。そうした熱量と動きを非常に感じられる劇場になってきたと思います。大西さんはそれをこれから感じられるし、高野さんはすでに経験して十分それを感じていただいている。そうしたものをしっかり味わっていただけるオペラにしていきたい」と抱負を語った。

ダブルキャストの魅力それぞれに味わって

佐渡オペラは、ダブルキャストで8公演を行う国内でもまれな公演だ。今回も外国の歌手たちを中心にしたチームと、日本人歌手たちのチームが4公演ずつ行う。

「演出家は同じ演出をしますが、歌手たちによって全く違う舞台に変わっていきます。劇場付きのオーケストラがあるので、歌手たちとオーケストラの稽古が密にできるのが強みですね。最近は両方を見るというお客さんが増えてきています」と佐渡芸術監督。

一昨年にダブルキャストを経験した高野は「前回は並河寿美さんとのダブルキャストでした。私は練習の時から見させていただいて、並河さんの立ち居振る舞いがすごく美しかったので質問したりアドバイスをいただいたり、コミュニケーションを取らせていただきました。本番が近づくにつれ、自分のやりたいハンナのイメージが膨らんできたので、あまり見ないようにしてきました」。

大西は「アメリカではダブルキャストはあまり経験していないので、新鮮です。(ダブルキャストでドン・ジョヴァンニを演じる)ジョシュア・ホプキンスの「ロミオとジュリエット」のマキューシオ役のカバーをしたことがあり、カバーの時は彼が舞台でどう動くかを同じようにやっていきます。今回は自分の色が出せたらいいんじゃないかなと思います。というのは、僕が彼と同じように演じたとしても、相手役も違うので全然違う表情をされるかもしれない。このキャストにしかない関係性が出てくるかもしれない。同じ劇場で同じセットで演じていても、それぞれの強みを生かせればいいなと思っています」と話した。

 

【公演概要】7月14日(金)~23日(日)各日14時開演 兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール ※18日(火)と21日(金)は休演

【料金】A席13,000円、B席10,000円、C席8,000円、D席6,000円、E席3,000円(全席指定)

 

特設サイトはコチラ https://www.gcenter-hyogo.jp/giovanni/




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