佐渡裕芸術監督が発掘したヴィオラの新星・谷口朱佳さん、第143回PAC定期演奏会にソリストで登場

リハーサル終了後、佐渡芸術監督にテンポの変わり目などを確認する谷口朱佳さん

兵庫芸術文化センター管弦楽団(PAC)の2022-23シーズンの定期演奏会の最終を飾るソリストは、東京藝術大学音楽学部3年次在学中のヴィオラ奏者・谷口朱佳(あやか)さんだ。

佐渡裕芸術監督に「すごい才能の子がいる」と谷口さんを紹介したのはベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のヴィオラ奏者、ワルター・ケスナー。当時高校生だった谷口さんの演奏を聴いて圧倒された佐渡芸術監督はすぐに定期演奏会への出演を依頼した。

その時、谷口さんが演奏した曲はドイツの作曲家パウル・ヒンデミット(1895-1963)の無伴奏ヴィオラソナタop.25-1だった。今回、PACと共演するのもヒンデミットの「室内音楽 第5番」op.36-4だ。谷口さんは最初にヴィオラを教わった恩師・川﨑和憲さんから「君は、ヒンデミットの曲になると急に生き生きするね」と言われてきたという。

大盛況だった今夏の佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ「ドン・ジョヴァンニ」閉幕から4日後の7月27日、KOBELCO大ホールでのリハーサルを終えた谷口さんに話を聞いた。(写真提供:兵庫県立芸術文化センタ―)

【谷口朱佳さんインタビュー】

――PACと共演するヒンデミットの「室内音楽 第5番」はどんな曲ですか?

出演のお話をいただいた高2の冬に初めてこの曲をCDで聞いた時は、すごくびっくりしました。こんな曲があるんだ!と。衝撃的でした。

その後、スコアを見ていくと、4つの楽章ごとにキャラクターがはっきりしていることに気づきました。第1楽章にはバッハ的な要素があり、第4楽章はドイツの田舎町のマーチがそのまま使われている。オケの景色がどんどん変わっていって、ヒンデミットが面白おかしく作曲していることが、だんだんわかってきました。そうするとイメージが膨らんできて楽しいんですよね。

――オーケストラのソリストは今回が初めてとのこと。初顔合わせのリハーサルを終えた感想は? いくつかスコアに書き込みもしていましたね。

一つひとつの質問に丁寧に答えた谷口朱佳さん

率直に言って、楽しかったです!

私はヴィオラを弾いているんですけれど、弾くたびに耳も広くなって、『あ、こういうことをやっているんだ』『ここがこうなって、こういう風になっているんだ』と、詳細がどんどん発見できる。

作曲家ヒンデミット自身がヴィオラ奏者でもあり、初期はロマン的な歌心のあるような曲を作っていたのが、中期は機械的なものへと作風が変わっていきました。私もまだ勉強の途中なんですが、この作品は、両方が混ざっていてユーモアを感じます。

また今日のリハーサルでリズム感が特徴的な曲だと、あらためて実感しました。ジェットコースターに乗っているような気分になります。

――20歳の谷口さんにとってはちょっと年上ですが、PACメンバーとの共演はいかがですか?

演奏時間20分余りのこの曲は<ヴィオラコンチェルト>と書いてあるのですが、室内音楽ということは大編成の室内楽、小オーケストラということになると思います。フルオーケストラと違って、一人ひとりが自発性を持って演奏し、全員で一つの音楽を作るというところが面白い曲だと思いました

――定期演奏会の前に、同じプログラムで7/29高砂、31太子町、8/2明石と兵庫県内3カ所で公演します。そして8/4(金)~6(日)の3日間が西宮での第143回定期演奏会です。

真剣な表情でスコアを確認する佐渡芸術監督と谷口さん

演奏機会の少ない曲をオーケストラと6回演奏する。滅多にない機会ですし、毎回ちょっとずつ違って、深みも増していくと思います。

ヒンデミット自身が生涯にこの曲を80回以上弾いたそうで、それくらいお気に入りの曲だったのだろうと思います。演奏する中で、その意味が少しでもわかっていけば。ヒンデミットの魅力が全部詰まっている曲だと思うので、私はそれをたくさん伝えていきたいと思います。

――最後に、谷口さんにとってヴィオラという楽器の魅力は何ですか?

ヴィオラという楽器は自分の声にも近くて、楽器屋さんで初めてヴィオラを弾いた時、ヴァイオリンにはないC線の音を「なんていい音なんだろう」と思いました。3歳から始めたヴァイオリンをる弾いていた時も「低音の方がいい音がするね」と言われていましたので。子どもながらに自分には低音の方が向いているのかなと思っていました。

高音のヴァイオリンと、低音部を支えるチェロとコントラバスの中間の位置にあるヴィオラは、オーケストラの中では音が聞こえにくいと言われることもありますが、音色がやわらかい。そして中間にあるからこそ、ヴァイオリンの要素も、チェロやコントラバスの要素も全部表現できる楽器なのではないかと思っています。つまり、弦楽器のいいとこどりの楽器だと思います。

――ありがとうございました。定期演奏会に伺うのを楽しみにしています。(大田季子)

 

【兵庫芸術文化センター管弦楽団 第143回定期演奏会】指揮・芸術監督:佐渡裕

8/4(金)・5(土)・6(日) 各日15:00開演

兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール

曲目 ブリテン:歌劇「ピーター・グライムズ」より「4つの海の間奏曲」

ヒンデミット:室内音楽 第5番

ブラームス:交響曲 第2番

チケット A席 4,000円ほか

予約・問い合わせ TEL0798・68・0255、芸術文化センターチケットオフィス(10:00~17:00、月曜休み)

兵庫芸術文化センター管弦楽団 公式サイトはコチラ https://hpac-orc.jp/

 

 




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