6/22(土)地元・西宮で10回目の笑福亭松喬独演会~チケット好評発売中

これからも「ちょっとでも笑わせてやろう」という師匠連の背中を見て育っていきたいと話す笑福亭松喬さん=2月14日、兵庫県立芸術文化センターで

地元・西宮の兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホールで独演会を続けてきた笑福亭松喬。今年6月22日(土)に開かれる会で独演会として10回目の節目を迎えるとあって2月、同センターで記者会見を行った。地元愛とサービス精神にあふれた記者会見は終始、笑いが絶えなかった。

ゲストは三遊亭好楽師匠

冒頭で「ここ芸文センターは家から自転車で来られる職場です。全国区の演者が集う落語会が多数おこなわれていますが、私は地に足付けて地元に根付いた落語会を行ってきました」と話し始めた松喬さん。

三遊亭好楽

記念の回のゲストは人気テレビ番組「笑点」でおなじみの三遊亭好楽師匠を招く。

「去年『日本の話芸』で『泥棒と若殿』をやらせていただいたら、好楽師匠からお電話いただきまして『泣いちゃったよ、あの話。家で落語会やってるんだけど、来てくれない?』と声を掛けていただきました。そういうご縁で、師匠も喜寿を迎えられましたので、この機会にお越しいただこうという段取りでございます」

酒蔵の街にふさわしい大ネタ「らくだ」を披露

松喬さんの演目は2席を予定。そのうちの1席は令和3年度(第76回)文化庁芸術祭大賞を受賞した際に披露した「らくだ」を取り上げる。上演時間1時間にも及ぶ大ネタで、人物の出入りが多い上に、“かんかんのう”の踊りや酔っ払いの芝居が入るなど、高い技量が要求される演目だ。

【あらすじ】とある長屋に住む乱暴者の卯之助は、体が大きく、のそのそしているので「らくだ」と呼ばれる長屋中の嫌われ者。ある日、らくだの家に兄貴分の弥猛(やたけた)の熊五郎がやって来た。返事がないので上がってみると、卯之助は前日食べたフグにあたって死んでいた。葬儀を出してやりたいが金のない熊五郎。折よくやって来た紙屑屋に、室内の物を買い取ってもらおうとするが、売り物になりそうな物は何もない。紙屑屋を脅して、長屋の住人から香典を集めさせた熊五郎は、次に紙屑屋に大家の家に行くよう命じる。「通夜に出す酒と料理を届けさせろ」と。もし大家が断ったら「死骸のやり場に困っております。ここへ背負ってきますから、どうか面倒を見てやってください。ついでに『かんかんのう』を踊らせてご覧にいれます」と言えと言われて……。

「酒蔵の街・西宮ですし、お酒の最高のネタということで『らくだ』の一席を選ばせていただきました。ただ、出てくる2人は灘のいいお酒を飲んでいるとは思えないんですが(笑)。上方の古典落語で、野漠(のばく)から千日前へと行くルートが出てきます。私は、お客様が戸惑うような古い言葉は使わず、さらっとわかりやすく話します。

西宮の子どもたちは『おいしいお酒ができるまで』という社会見学で、大関さんに行くんですが、私いつも嫁さんに言うんです。飲まれへんもんが行ってどないすんねん!(一同、笑) 嫁からは『お水がおいしいっていうことやんか』といつも言われるのですが」

地元・西宮とともに歩んだ同世代へ

松喬さんは1961(昭和36)年西宮生まれ。小学4年生の10歳までは尼崎の杭瀬で育った。

「尼崎の杭瀬と出屋敷は、闇市上がりの一番大きな市場のある所で、私が今『寄合酒』が演じられるのは杭瀬市場のおかげです。落語に出てくる市場と風景が同じなんです。

小学校5年生の時、親が西宮に家を建てて移ってきました。西宮は本当に転勤族が多い街だと思います。ここで落語会をやって、西宮出身の方を尋ねても手が上がるのは3割ほど。7割は私のように外から引っ越してきた方のようです。引っ越した当時、うちの親から『ええか、ここは西宮やで。上品なふりせな、いかんよ』と言われましたが、同級生の多くが『ここは西宮よ、今までの街とは違うのよ』と言われていたフシがあります」

「今でこそ西宮が近畿圏で住みたい街No.1になって、30代を迎えた我々の子ども世代が本当の西宮っ子になっていると思いますが、私が子どもだった当時の西宮は、皆さんものすごく不安の中で生きてきたんやないかと思うんです。西宮はどういう街なんだ? 高級住宅地の芦屋になるのか、元気な庶民の街・尼崎になるのか」

上ヶ原小学校、甲陵中学校、県立西宮高校で学んだ松喬さんは「故郷西宮の芸文センターでの独演会は、しゃべっているうちに皆さん私と同じような境遇で来られた方が多いんだなとわかってきます。西宮ですよという顔をして聞いているけれど、皆さんどこかから来ている。かつて少し不安な思いの中で生きてきて、今やっと落ち着いて、西宮が好きで芸術にいそしんでいる。(笑福亭)鶴瓶師匠や(柳家)喬太郎師匠でなく、私が話すからこそ、きれいなホールで庶民的なところを思い出して懐かしんでいただけると思います」とアピール。

笑福亭喬龍

独演会には4人いる弟子のうち、唯一落語研究会出身ではない、5年目の笑福亭喬龍も出演する。「神戸出身で18歳で劇団を立ち上げ、小劇場界で脚本と演出を手掛けていた変わり者です。ええ格好しいで、何一つ初志貫徹できない中途半端な男でしたが、通常3年の修業期間を半年伸ばして晴れて独り立ちしました。僕としてはどう化けてくれるかなと期待しています。一朝一夕では上がれないところなので、こういうホールに出られるという喜びをもって上がってもらいたい」

芸歴40周年を超えて初心に戻る

昨年、芸歴40周年を迎えた松喬さんは、早くに師匠の六代目笑福亭松喬(1951-2013)を亡くしている。

「先代は私よりも10歳年上で、亡くなった時は62歳でした。私は3月で63歳になり、師匠の年を超えるので『あの時師匠はこんなネタをやっていたんや』というのが、もうありません。なので、またゼロから始めよう、初めて師匠の門をくぐった入門当時の自分に戻ろうと考え、これまでにいただいた賞状や記念品などを全部捨てました。家のロフトがいっぱいになっていて、もし私が死んだ時に『お父さんが生涯かけてやってきた落語でもらったもの』を家族は捨てにくい。だから迷惑をかけないように今のうちに自分で処分したのです。もらったという事実があれば、それでいい、と。これからは落語が大好きだったころの自分に戻って、大好きな泥棒ネタも新しいものを作りたい」

 

【笑福亭松喬独演会】6月22日(土)14時開演(13時30分開場)、兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール。A席4,000円、B席3,000円(全席指定・税込み)。チケット好評発売中。予約・問い合わせは芸術文化センターチケットオフィス、TEL0798・68・0255(10:00~17:00/月曜休み)。

 

公演の公式サイトはコチラ https://www1.gcenter-hyogo.jp/contents_parts/ConcertDetail.aspx?kid=5042412310&sid=0000000001




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