ジャンルの垣根を超えた、大人がくつろげる新店

関西・オンナの美酒佳肴

ジャンルの垣根を超えた、大人がくつろげる新店

【五感】神戸・元町 

外飲みの恋しさがピークを迎えた頃、インスタグラムのDMにうれしいお知らせが届く。「新店をオープンします。皆様でぜひいらしてください」。以前、こちらで紹介した神戸・元町の人気立ち飲み店「朝呑み 楽酒」の栃本オーナーからだった。さっそく、地元の飲み友達を誘って。再会を楽しみに、夕暮れ時の神戸の街へと向かった。


カナダ産 活オマール海老のロースト~贅沢キャビアのソース

神戸サウナのちょうど南側、個性豊かな飲食店が軒をつらねる路地の一角で、鮮やかなブルーの暖簾が迎えてくれる「五感」。

私たちが案内されたのは、シェフの手仕事がすぐ間近で見られるライブ感たっぷりの特等席。カウンターの一角は美しいベネチアングラス、その上でリズムよく盛り付けがなされ、彩り豊かな一皿が次々に生みだされていく。


お造り盛り合わせ5種

二品目の「お造り盛り合わせ」に添えられていたのは、かわいいオレンジの実。なんだろうこれ、食べられるのかな?「食用の“ほおずき”ですよ。甘いので、ぜひ」。職業病なのか、ついあれこれ質問してしまう私に、やわらかな笑顔のシェフ。矢羽根のようなフォルムと、初めて口にする果実の甘みにも癒やされる。

「豊かな彩りと、優しい味わい。初めて試食したとき、明るい太陽のようなお料理だと感じました」と、オーナーが賞する千久谷(ちくたに)シェフは、フレンチひとすじに20年以上のキャリアの持ち主。三品目の「フォアグラのカツレツ」には新しょうがの佃煮、続く「但馬牛としめじのディクセルロール巻き」には山椒のソースが添えられ、高級食材ながらどこかホッとする一皿にワインが進む。和フレンチをベースに、ジャンルにこだわらずおいしいもの追求するのが「五感」なのだ。

軽やかな泡での乾杯を皮切りに、鮮魚はスッキリした辛口白ワイン、現地まで買い付けに行く但馬牛は重めの赤ワインでと、美酒とのペアリングも至福のひととき。いつのまにか生ビールやハイボールを追加オーダーしている飲み友達の姿も、久しぶりでうれしくなる。ワインはもちろん、日本酒や焼酎も1号店「楽酒」の目利きそのままに、リーズナブルな価格設定というところも期待を裏切らない。


但馬牛としめじのディクセルロール巻き~山椒のソース~

シックで落ち着きある店内は、実に居心地がよい。もとあった店舗を改装したと聞いていたが、なんとスタッフ総出でDIYしたのだそう。コロナ禍での休業期間中、「どうせなら自分たちでやってみよう!」と、壁をはがして漆喰を塗り、厨房機器も一新。時には大工の常連さんに力を借りながら、自らの手で一歩ずつ完成させたというから驚きた。

「みんな初めての経験ですから、なかなか大変でした」と笑う、栃本オーナー。一大プロジェクトを経て、思いの詰まったお店だからこそ綺麗に保ちたいという意識や、チームとしての団結力が自然に芽生えたそう。宣言下でオープンは二度の延長となったが、決して焦ることなく、逆に十分な体制を整えて船出を迎えられたと語ってくれた。

グランドオープンの7月12日に1号店の「楽酒」も同じくリニューアルオープンを迎えた。カジュアルな立ち飲みスタイルはそのままに、開業当初の大将が復活し、新たにお寿司が登場するというからこちらも楽しみだ。

「楽しい酒の場である楽酒、そして、大人がくつろげる五感。それぞれの進化を見てみたいんです」。たとえ厳しい状況下であってもピンチをチャンスに変えながら、しなやかに走り続ける店主の姿に勇気をいただいた。

新店「五感」はシェフのおまかせコースをはじめ、居酒屋メニューでチョイ飲みも大歓迎というフトコロの深さ。次回はワインをボトルで頼んで、ゆるゆると昼酒もいいな。

 


◆ MENU(税込み)
おまかせメニュー 5500円(5品)~
※内容は仕入れにより異なります
鮮魚お造り盛り合わせ 3種1419円、5種1969円
海鮮アヒージョ 1309円
仔羊の香草焼き 瞬間スモークで 2079円
生ビール、グラスワイン、ハイボール 各450円
ワイン(ボトル) 3300円~

◆ Data
五感(ごかん)
電話:078-945-8310
住所:兵庫県神戸市中央区北長狭通2-8-9 1F
営業時間: 11:00〜23:00(※時短要請により、当面は~20時半)
休み:水曜
※お会計はカード決済のみ

※新型コロナウイルスの感染拡大防止のため対策した上で取材・撮影しています。
※お出かけの際は府県が発表する最新情報とお店の営業状況をご確認ください。

 


◆ Writing / 外園佳代子(ウエストプラン)
http://www.west-plan.com/