厳選した国産牛肉は日本酒が飲みたくなる上品な味

関西・オンナの美酒佳肴


【炭火焼肉 ちせ】神戸・板宿 

ヘレ

2023年2月にオープンしたばかりの焼肉屋「ちせ」。板宿駅南出口2からすぐの場所ながら、裏通りにあるため案外静かなスポット。コロナ禍を経て新たなスタートをきった店主は、グルメで目利きな人だからと、期待に胸をはずませて出かけた。

店主の白石幸子さんは、三宮で23年、主に社用族が接待に利用するラウンジを経営していた。上品で落ち着いた雰囲気の店は、幸子さんが作る家庭料理が出されることもあり、女性にとっても安心して飲める店だった。居心地がよくて何人もの友人が長年通っていたし、私も行く度に幸子さんの気配りとお酒を楽しんだ。そしてコロナ禍、「自分で定年を決めてもいいのでは…、もうのんびりしよう」と店を閉めることに。
でもじっとしているのは性に合わず、縁があって居抜きの店を紹介される。「自分が焼肉屋をやるとは思いもしなかった」と言うものの、決めたら徹底的にこだわるタイプ。シンプルな料理だからこそ素材は大事と、生産者の元を訪れて直談判。器も丹波焼の作家物だ。

自家製キムチとナムル

最初は自家製キムチ。大根、白菜、セロリ、それにトマト! 辛みのあとにトマトの甘みがほんのり残ってサラダ感覚で食べられる。焼酎のソーダ割を飲みながら、次はたっぷりのナムルがアテだ。豆もやしやゼンマイなど一般的なもののほかに、紅菜苔、のらぼう菜、スイスチャードなど、日によって珍しい野菜も入る。ぱくぱく食べていたら、「生センマイも食べてみる?」と出てきたのは、生白センマイ。苦手なんだけど…と思いながら口に入れると、シャキシャキした食感にさわやかな風味。甘辛いタレがよく合っている。下準備に明け方までかかったと言っていたように、本当に丁寧に掃除をして皮を剥いたんだと納得。

カルビやハラミは自家製の甘いタレ、ねぎ塩、そしてレモンの三種類のタレでいただく。ニンニク有り無しが選べるので翌日に仕事がある日はありがたい。そして、網の上にトンと置かれたのは分厚いヘレ肉、いこった炭火でこんがり焼き目がつくころに、目の前で生ワサビをすりおろしてくれる。ワサビのやわからい辛みが肉の旨みをさらに引き立てるので、ここで日本酒に。この店の日本酒は山口県の獺祭のみ。香り高い獺祭が焼肉に合うのだろうかと思ったけれど、うっとりとする組み合わせに大満足。

白ごはんを頼むと、もっちりとした食感と甘みのある淡路島の鮎原米。おいしいと評判だが収量が少ないため、よほどのルートがないと入手できないと聞く。玉ねぎも鮎原米と同じ井手農園から、ニンニクは青森の中沢農園からだ。「たまたま知り合いの紹介で」と幸子さんは言うが、前の店からの常連の飲食関係者は、「欲しくても自分ですら手に入らないのに、なぜこの人に…」と笑う。近くに焼肉店が何軒もあるエリアでのスタート。食べ放題はもう無理、美味しいものを少しずつ食べたい、という世代にぴったりの店だ。

 



◆ MENU(税込)

生ビール550円
焼酎440円~
獺祭 純米大吟醸三割九分1,078円
獺祭 純米大吟醸45 748円
カルビ2,090円
ハラミ1,650円
ヘレ4,279円
淡路島の鮎原米330円


◆ Data

炭火焼肉 ちせ
電話:078-736-1807
住所:兵庫県神戸市須磨区大田町2-4-13 井上ビル 1F
営業時間:18:00~23:00
定休日:不定休

◆ Writing / 松田きこ(ウエストプラン)
http://www.west-plan.com/

 

※新型コロナウイルスの感染拡大防止のため対策した上で取材・撮影しています。
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