魚屋直営の居酒屋で味わう旬の魚と日本酒

関西・オンナの美酒佳肴


【わさびと魚】神戸・元町 

元町駅から鯉川筋を上がる道ぞいには魅力的な店がたくさんある。気になりつつも入ったことがない店、それが「わさびと魚」だった。看板は出ているが、入口が微妙に目立たなくて、それがまた面白くもあるのだが…。ようやく秋の気配を感じる頃、この店を訪れた。

ちょっとレトロな雰囲気の店内に入ると、黒板には、造りにできる魚の種類がずらりと書いてあり、もちろん焼き、揚げなど、食べたい調理法でも注文できる。このしくみはけっこう好きかも、と同行した料理屋の女将とうなずき合う。「わさびと魚」は、湊川で魚屋を営んで70年以上になる「魚勝」の直営店。女将は、子どもの頃、お正月の祝い鯛は、いつも「魚勝」に買いに行っていたことを思いだした。

まずはおまかせで造りを三種類。明石蛸、カツオ、ヒラメのイキのいいのが出てきた。鮫皮のおろし板にはすったばかりのわさびがたっぷり。そのまま箸につけてひとなめするとまろやかな辛みが広がった。すりたての香り高さは、新鮮な魚に少し付けるだけで、魚の旨みを引き立てる。

店員さんにすすめられたのは名物の銀鱈の西京焼き。こんがりと焼かれた皮目は香ばしく、ほんのりと甘みを感じたあとに塩味がきて、身はしっとりと柔らかい。自家製西京味噌に漬けること3日とのことだが、きっと魚の新鮮さも味のポイントなんだろうなと女将と話しながら舌鼓を打つ。シンプルな塩焼きも食べてみようと、甘鯛の塩焼きを注文すると、たっぷりの振り塩が美しい大きな甘鯛が登場。味については、もうなにも言うことはないほど満足度が高かった。

さらに、常連さんの多くが注文するという、しめ鯖炙り寿司もオーダー。炙った鯖の香ばしさ、しっかりシメた鯖の酸味、酢飯の加減、そのバランスが絶妙だ。続いて選んだ野菜の炊き合わせは、オクラはガーリック風味、蓮根はピリ辛、さつまいもはレモン味、ナス、エノキも一つ一つ味が違って、それぞれにおいしい。

麦焼酎のソーダ割りからスタートして、日本酒は福寿の純米酒に落ち着いた。さわやかな酸味とまろやかな旨みの福寿らしい味が魚料理によく合うのだ。使われている器は、個性的な作風が人気の丹波焼の作家、大西雅文さんのもの。大胆な色使いでありながら料理を引き立てる大西さんらしい器について店主とも話しがはずんだ私たち。おいしさのあまりたくさんお酒を飲んだせいか、神戸育ちの女将なのに電車で自宅に帰るのに、いつもの倍、時間がかかったそうだ。

 


 

◆ Data
わさびと魚
電話:078-321-1300
住所:神戸市中央区下山手通3-6-4 西田ビル 1F
営業時間:【ランチ/平日・土】11:30~14:00 (LO13:45)
※祝日はランチ営業なし
【ディナー/月~木・日】17:30~23:00 (LO22:30)
【ディナー/金・土】17:30~00:00 (LO23:30)
定休日:不定休

◆ Writing / 松田きこ(ウエストプラン)
http://www.west-plan.com/

 

※新型コロナウイルスの感染拡大防止のため対策した上で取材・撮影しています。
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