子どもの視点で現代社会のリアルに迫る日向寺太郎監督の最新作「こどもしょくどう」4/5(金)から関西で公開

「鈴木梨央さん以外の子役はすべてオーディションで決めました。リハーサルや稽古はせずに本番に臨みました。『火垂るの墓』(2008年)を撮った時の経験から、子役は何回も同じ芝居をしないほうがいいと考えたのです。撮影に入る前は不安もありましたが、現場に入ってから、それが正解だったと思いました」と話す日向寺太郎監督=3月18日、大阪市内で

 いま日本には約3,000以上の子ども食堂があると言われている。昨年4月に「こども食堂安心・安全向上委員会」(代表・湯浅誠法政大教授)が発表した数字では全国に2,286カ所。その時点で大阪府下には219カ所だったが、昨年9月1日現在で府が調べた時には329カ所に増えていた。多様化しながら増えている子ども食堂の原点には何があるのか? まもなく関西での公開が始まる映画『こどもしょくどう』は、子ども食堂が必要とされる社会が、子どもたちにはどんな風に見えているのかを追求した日向寺太郎監督(53)の最新作だ。

 「子ども食堂がなぜ作られたかを、当事者である子どもの視点から描こうと思った。作ったのは大人なので大人も当事者だが、視点を変えれば子どもたちも当事者。その子たちには今の社会がどんな風に見えるんだろう?というのが根本的なところではないか。子どもたちが今どういう風に生きているかを描くことが原点ではないかと思った」

 

©2018「こどもしょくどう」製作委員会

【ものがたり】小学5年生のユウト(藤本哉汰)は、東京の片隅で食堂を営む父(吉岡秀隆)母(常盤貴子)と妹ミサ(田中美空)との4人暮らし。食堂が忙しい時間、父母が就けない夕食のテーブルには、ユウトとミサのほかに、幼馴染みのタカシ(浅川蓮)も座ることが多い。タカシは育児放棄ぎみの母と2人で暮らし、十分に世話してもらえていないからだ。ある日、ユウトとタカシは野球の練習の帰り、川原で遊ぶ姉(鈴木梨央)と妹(古川凛)を見かける。通るたびに姉妹の姿を見かけるようになって幾日か経ったが……。

 

 映画は、ほとんどの場面でユウトの視点から進んでいくが、時折、川原の姉妹の過去の幸せだった回想シーンが登場する。

 「姉妹の家族をどこまで描くかは試行錯誤した。姉妹の一家が特別な家族に見えてはいけない。具体的に、あの父だから、あの母だからこうなったというのではなく、この家族は明日の自分たちかもしれないと思ってほしかった。なぜなら現代の社会は、病気になる、勤務先が倒産するなど、何か一つ間違えたら、誰でも生きる気力を失ってしまうことが起こりうる社会だと思うから」

 

 物事の起こった背景を過剰に説明せず、登場人物たちの感情を描いて物語をつづっていく手法は、物事の意味や理由を知りたがる、筆者を含めた大人たちには多くの疑問を抱かせる。だが、大人の社会の意味や理由など知りようもない子どもたちにとっては、目の前の物事がすべて。受け止めるしかない現実を前にした時の感情が、確かに子どもたちにとっての“リアル”になるのだろう。

 日向寺監督は「この映画を見て『希望を感じた』という人もいれば『切なかった』という人もいる。そこが映画の面白いところで、登場するどの子に感情移入して見ているか、どのシーンが心に残っているかなど、人によって様々な受け止め方があると思う。見終わった後に、見た人同士で、どこでどんなことを感じたか、たくさん話し合ってもらえたらと思っています」と話す。

 

 日向寺監督は『ミツバチのささやき』(1973年、スペイン)のヴィクトル・エリセ監督が大好きだという。そういえば『ミツバチのささやき』も子どもが主役の映画で、その感情の動きを繊細に描いた作品だった。『こどもしょくどう』は、日向寺監督が敬愛するエリセ監督と同じアプローチで、現代の日本社会を見つめた作品なのかもしれない。

 

【公開情報】4月5日(金)からテアトル梅田、4月12日(金)から神戸国際松竹、4月20日(土)から京都シネマで公開。




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