箏(こと)の新しい境地を切り開く、 注目の箏奏者・LEOインタビュー!

箏の伝統を受け継ぎながら、新たな魅力を追求する若手奏者として注目を集めるLEO。2022年1月16日(日)、あいおいニッセイ同和損保ザ・フェニックスホールで開く「5STARS VOL.1 LEO〈箏〉×CLASSIC」を控え、箏に対する思い、公演の抱負について話を聞いた。

180センチの長さという、愛用の箏を手に微笑むLEO

 

—箏を始めたきっかけは?

 

幼稚園から高校まで通った横浜インターナショナルスクールで、小学4年生のとき音楽の必修で箏の授業があり、それが出会いでした。日本人の母とアメリカ人の父の間に生まれましたが、その頃両親は離婚しており、家ではずっと日本語でしたので、学校で英語がうまく話せず、元々シャイな性格もあって自己表現ができずにいました。でも、人前で演奏できるようになると、まず、言葉以外の方法で人とつながれる音楽というものに魅力を感じました。その後、中学時代には友人とバンドを組んでドラムやベース、鍵盤といろいろな楽器を試しましたが、やはり、箏が一番自分にしっくりくると気づいたんです。小さい音と短い余韻で聞く人を音の世界に手繰り寄せるような、内に秘めたものを伝えるような、そういった少し内省的な箏の音楽性が、自分に合っていたのだと思います。だから、ここまで続けてこられたのかな、と思っています。

 

―16歳で「くまもと全国邦楽コンクール」最優秀賞を史上最年少で受賞。19歳でメジャーデビューして以来、オーケストラや著名なアーティストとの共演など、順風満帆な活動ぶりですね。

 

デビューのきっかけは、コンクールの審査員に日本コロムビアのプロデューサーがいらして、お話をいただけたことでした。また、まだ無名だった20歳の頃、テレビ番組「情熱大陸」に出演させていただいたことで多くの人に存在を知っていただけました。そしてすばらしい演奏家の方々と共演させていただく機会も増えました。もちろん、僕なりに努力は続けていますが、こういった出会いがあったことは、運が良かったなと思っています。

例えばピアノなどクラシックの演奏家として食べていける人は少ないですが、和楽器、それも箏ではほとんどいません。ですから、新しい形で活躍できるアーティストとして開拓していきたいし、何かしら箏の業界に還元していきたいと思っています。

僕のもっと下の世代で、プロになりたいと思っている人たちが、こういう道筋があるんだと希望を持ってくれたらうれしいですね。

1998年横浜生まれ。14歳で「全国小中学生箏曲コンクール」グランプリ受賞。16歳で「くまもと全国邦楽コンクール」史上最年少 最優秀賞・文部科学大臣賞受賞。19歳でファーストアルバム『玲央1st』でメジャーデビュー。これまでにEテレ「にっぽんの芸能」、MBSドキュメンタリー番組「情熱大陸」、テレビ朝日「題名のない音楽会」、など多くのメディアに出演。秋山和慶指揮 東京フィルハーモニー交響楽団、沖澤のどか指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団でソリストを務める。2019年 「第29回出光音楽賞」、「第68回神奈川文化賞未来賞」受賞。現在、沢井箏曲院講師。東京藝術大学在学中。

―コロナ禍はどんな影響がありましたか?

 

今年は公演も例年どおりに戻りつつありますが、去年はコンサートがほぼ延期や中止になりました。当時は、どんどん忙しくなって演奏に追われるような状態だったのですが、一回立ち止まることができて、人前で演奏するということについて考え直す時間がありました。お客様の中には、毎週のようにいろいろなコンサートに出かけられる方もいらっしゃると思いますが、一方で年に一度だけ特別なイベントとして来られる方もいらっしゃる。そういう特別な体験を期待していらっしゃる方のためにも、一つ一つの公演で最大限のパフォーマンスができるように、より大事に舞台を踏みたいなと、考えるようになりました。

 

―この年末年始も公演が目白押し。著名なアーティストとの共演も多いですね。

 

ありがたいことです。大先輩のアーティストと共演させていただく舞台が多いのですが、長くこの業界で活躍しておられる方は、アーティストとしての技術が卓越しておられるのはもちろん、人間として素晴らしく魅力的な方ばかりです。周りの人によく気配りされて、一緒にいると空気が和らいだり、話していて楽しかったり。人生の先輩としても尊敬しますし勉強になりますね。

 

―東京藝術大学音楽学部邦楽科の学生との2足のわらじですが、どんな生活ですか?

 

今はほぼ仕事に専念できていますが、少し前までは、学生としてレッスンの楽曲を練習しながら、プロとしてコンサートの練習もするという日々でした。箏は弾く技術だけでなく、暗譜の能力も必要なので結構大変でしたが、精神的にも鍛えられましたね。今も毎日2~6時間は弾く練習をしていますが、実は、弾かない練習、というのも大切にしています。楽譜を読み込んだり、他のアーティストのCDを聴いたり。覚えた楽譜を思い浮かべて、頭の中でどういう構成で作り込んでいけばいいかな、と構想を練ったり……。そんな楽器を鳴らさない「静かな練習」にも時間をかけています。

 

プライベートでは、コロナ禍で料理に目覚めまして、凝ったものを作るようになりました。スパイスからカレーを作ったり、パスタとか中華もいろいろ挑戦しています。あと、最近ペット可の家に引っ越したので猫ちゃんを飼い始めました。それまでは、ファッションが好きなので買い物に出かけることも多かったんですが、今は猫がいるから基本的に家に居たくなっちゃって、いつも猫と戯れています(笑)たれ耳、ダイリュートキャリコで長毛のスコティッシュフォールドの女の子。名前はモコちゃん。すごくかわいいんです!

愛猫のモコちゃん、「最初は手のひらに乗るくらい小さかった」そうだが・・・
「これくらい」大きく育ったとのこと

―同世代のアーティストと交流はありますか?

この世界ではまだ若輩者なので、年上の方と関わることが多いのですが、同世代では、ピアニストの藤田真央くん、角野隼斗さん、ショパンコンクールに入賞された反田恭平さんらとは食事に行ったりしていましたね。そんなときも、やっぱり話題は音楽のことばかりです(笑)

 

―1/16の「LEO〈箏〉×CLASSIC」は、どんなステージになりそうですか?

 

これまでも各地で共演させていただいている尺八奏者の黒田鈴尊さんをゲストに迎えて、いろいろな時代やカルチャーのミクスチャーとなっているプログラムを予定しています。八橋検校(けんぎょう)など日本の古典から、バッハのような西洋クラシック、冷水乃栄流(ひやみず のえる)さん、藤倉大さんといった今の時代の作曲家に書いてもらった曲まで多彩です。一見、脈略がなさそうに思えますが、僕の演奏家としての芯にあるのは、日本独特の表現。西洋の音楽にはない、「間(ま)」や、邦楽特有のリズムを意識することで、どんな楽曲にも日本の音楽の良さが際立つように演奏したいと思っています。箏の魅力を満喫しつつ、普通の箏の演奏会では聴けないいろんなジャンルの楽曲も楽しめる、そんな公演になれば。使用する箏も、スタンダードな13絃から、低音用の17絃、さらに音域を広げた25絃まで、幅広い音色をお届けする予定です。初めての方はもちろん、箏の演奏を聴いたことのある人も何か新しい発見や驚きがあるような公演になるんじゃないかな、と思います。

 

テレビや雑誌など数々のメディアに、今、引っ張りだこのLEOさん。この日もラジオとテレビの収録を終えたばかりだったが、疲れも見せずキリっと表情を引き締めて丁寧にインタビューに応じてくれた。1月16日のコンサートで、革新的で華麗なLEOの世界をライブで体験してみては?

 

■「5STARS VOL.1 LEO〈箏〉×CLASSIC」

日時:2022年1月16日(日)14時開演(13時30分開場)

会場:あいおいニッセイ同和損保ザ・フェニックスホール(JR東西線北新地から徒歩5分)

チケット:5,500円(全席指定)

問い合わせは、キョードーインフォメーション☎0570・200・888(11時~16時日・祝休み)まで。




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