反田恭平と佐渡芸術監督の豪華共演! 新メンバー22人を迎え2023-24シーズン華やかに開幕~兵庫芸術文化センター管弦楽団 第144回定期演奏会~

【PACファンレポート66兵庫芸術文化センター管弦楽団 第144回定期演奏会】待ちに待った2023-24シーズンの開幕! 9月の兵庫芸術文化センター管弦楽団(PAC)の定期演奏会は、ソリストに人気絶頂のピアニスト、反田恭平が登場するとあって開演前から聴衆の期待がKOBELCO大ホールに満ちているのを感じる。

開演前、佐渡裕芸術監督はトークで「今回の定期演奏会のチケットは発売開始2分で完売したそうです。もちろん、僕たちの実力というよりは反田くんのお陰です(笑)。

プロの楽団でありながらアカデミーの要素を持つPACは10人が卒団し、新たに22人の新メンバーを迎えました。卒団生は今や日本のほとんどのオーケストラにおり、世界各地のオーケストラでも100人以上が活躍しています。

終演後のロビーで、クラウドファンディングのブースにはたくさんの人が問い合わせに訪れた

開幕前にゲスト・トップ・プレイヤーたちを招いて、淡路島でミュージック・キャンプを行い、チャイコフスキーの交響曲第4番をみっちり練習してきました。クラリネットのゲスト・トップ・プレイヤー、ラスロ・クティはPACの第1期生で、ミュンヘン・フィルの首席奏者です。一昨年はソリストとしても登場してくれました(第133回)。PACメンバーの在籍期間は最長3年、入団時35歳以下という制限もあります。メンバーは在籍中から世界各地の楽団のオーディションを受けに行き、楽団はその渡航費用などを支援していますが、昨今の円安と物価高騰の影響で続けていくのが難しい状況です。それでもこのアカデミー機能をより良いものにするために、クラウドファンディングを行うことになりました。募集期間は10月末までで、目標額は500万円です」と訴えた。

ロビーにはクラウドファンディングのブースが設けられ、返礼品の一つである佐渡芸術監督と反田恭平の連名サイン色紙の写真が掲示されていた。

★PACのクラウドファンディングについて詳しくはコチラ https://readyfor.jp/projects/hpac2023

 

大きな拍手に迎えられて登場した反田恭平は、佐渡芸術監督のリクエストに応えてベンジャミン・ブリテン(1913-1976)のピアノ協奏曲を披露。2人とも初めて演奏する曲という。ブリテンの曲は先月の第143回定期に続く選曲。自身が優れたピアニストだった作曲家自身が1938年8月に、ヘンリー・ウッド指揮するBBC交響楽団と初演したそうだ。

今シーズンのプログラムの表紙は、2024年8月の第152回定期演奏会で演奏するシェーンベルクの交響詩「ペレアスとメリザンド」のイメージを膨らませてほしいと、佐渡芸術監督が寺門孝之さんに依頼。メーテルリンク作の戯曲「ペレアスとメリザンド」をテーマに絵本のように描き進めていくという

反田の演奏は満員の聴衆の期待を裏切らない素晴らしい出来栄え。

疾駆するピアノの見事なスピード感! 佐渡芸術監督の指揮も心地よさげに弾んでいる。当たり前のことだが、ピアノという楽器が、弾く人によってこれほど多彩な音色の違いを紡ぎ出せるとは! 約34分の演奏終了時に後方の席から「ああ、終わってしまった…」と惜しむようなつぶやきが聞こえてきた。

ソリストのアンコールは、モーツァルトの「トルコ行進曲」。おなじみのフレーズで演奏が始まった時、さざめき笑いが起こったが、軽やかなやさしい音色がホールに満ちると、何とも言えない幸せな気分に。濃厚な一皿を味わった後のおしゃれな口直しシャーベットの趣だった。

 

オーケストラの演奏は、ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840―1893)の交響曲第4番。冒頭のトークで「PACとこの曲を演奏するのは本当に久しぶりです(調べたら2008年11月の第20回以来)。ウクライナにルーツを持つチャイコフスキーは、民族音楽的な旋律を効果的に使っています。苦悩から歓喜へという構図は、ベートーヴェンの交響曲のよう。経済的に苦しかったチャイコフスキーが創作活動に専念することを支えたパトロン、メック夫人に献呈した曲です。二人の間に交わされた1200通以上の書簡は、作曲家の思いを知る貴重な資料になっています。冒頭の重苦しく苦悩に満ちたファンファーレは運命。第3楽章はすべての弦楽器が弓を使わないピッツィカートで演奏します。第4楽章は熱狂的な歓喜に包まれて終わります。お楽しみください」と解説した佐渡芸術監督。

カーテンコールの間の撮影がフラッシュ撮影なしなどの条件付きでできるようになった。開幕前日の公開リハーサルで佐渡芸術監督は「コロナで卒団が1年間伸びたメンバーがいたオーケストラはやはり安定感がありました。22人の新メンバーを迎えた時、思い出したのは2005年のPAC創立の時のこと。手探りだったあの時を思えば、やり方はもうわかっています」と話し、頼もしかった

一つひとつの楽章の輪郭がはっきりと際立つドラマチックな構成で、様々な楽器が随所で活躍し、聴いていて楽しい。第4楽章を聴いている時、泣き顔のままで果敢に前を向いて歩き出そうとする人物のイメージが脳裏に浮かんだ。そう、まるで「風と共に去りぬ」のラストシーンのスカーレット・オハラのように。

PACの新メンバーには、「朝日ファミリー」発行エリアからは「8歳から地元・西宮でPACを聴いて育った」という石原小春(フルート)、大阪府能勢町出身の田尻彩乃(ヴァイオリン)がいる。2人を含む新しいPACの船出に幸あれと祈る。

アンコールはJ・シュトラウス2世の「ピッツィカートポルカ」だった。

 

コンサートマスターは田野倉雅秋。ゲスト・トップ・プレイヤーは、ヴァイオリンの戸上眞里(京都市立芸術大学准教授、元東京フィルハーモニー交響楽団第2ヴァイオリン首席)、ヴィオラの村上淳一郎(NHK交響楽団首席)チェロのクレメンス・ヴァイゲル(ゲルトナープラッツ州立管弦楽団首席)、コントラバスのダン・ステュッフェ(オスロ・フィルハーモニー管弦楽団副主席)、冒頭トークで佐渡さんが言及したPACのOB 、クラリネットのラスロ・クティ(ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団首席)、ホルンのティアンシャ・ウー(マカオ管弦楽団首席)。スペシャル・プレイヤーはホルンの五十畑勉(東京都交響楽団奏者)、ティンパニのミヒャエル・ヴラダー(ウィーン交響楽団首席)。

PACのOB・OGは前出のクラリネットのほかに、ヴァイオリン3人、チェロとパーカッションが各1人参加した。(大田季子)




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